なぜかピューマに殺されるオオカミが増えている、専門家が困惑、米ワシントン州
ワシントン州だけの奇妙な現象、理由は謎
米国ワシントン州で、野生のオオカミがピューマに殺されるという事例が多発している。州の魚類野生生物局(WDFW)によると、2013年からこれまでに、追跡用の首輪をつけたオオカミが6頭殺されたという。これは、州が把握している21件の自然死のほぼ30%にあたる数字だ。 【動画】こんな所にピューマの赤ちゃんが4匹も! 「もしこの傾向が州のオオカミの全体像を表しているのだとしたら、大変大きな数字です」と、WDFWの生物学者であるトレント・ルーサン氏は話す。しかも、一つの群れだけではなく、ワシントン州の複数の地域における、異なる群れで起こっている。 一方、オオカミの数がワシントン州よりも多い米国西部のほかの州では、同じような報告例がほとんどない。1995年に、主にワイオミング州とアイダホ州中部にまたがるイエローストーン国立公園にオオカミが再導入されて以来、モンタナ州とアイダホ州でオオカミの数が増え、今ではワシントン州の5倍を上回る数のオオカミがこの2州に生息している。 イエローストーンでは、過去28年間でオオカミがピューマに殺された記録は2件しかない(最後の記録は2003年)。アイダホ州でも、報告の記録は2件だけだ(最後の記録は2012年)。 一部がイエローストーンに含まれるモンタナ州では、2009~2012年の間に5頭がピューマに殺された。モンタナ州狩猟管理局長を務めるブライアン・ウェイクリング氏が知る限り、それ以降は報告がないという。 「それだけほかの州では珍しいということです」と、ルーサン氏は指摘する。「私たちの州のオオカミの数はほかと比べるとはるかに少ないのに、なぜかピューマに殺される数は多いのです」。ワシントン州のオオカミは自然に分布域を広げていき、最新の調査では主にカスケード山脈と州北東部の森林部で、37の群れに計216頭が存在することが確認されている。
「オオカミのほうが強い」とは限らない
オオカミは、群れになればピューマ1頭よりも強い。木の上に追い詰めたり、死肉をあさっているピューマを追い払って、エサを自分たちのものにすることもある。 しかし、一対一であればピューマのほうが有利になる。一匹オオカミを待ち伏せして襲うのがピューマの得意技だ。ワシントン州でピューマに殺されたオオカミは、1件を除いてすべて単独で行動していた。 「オオカミのほうが強いと思われていますが、必ずしもそうとは限りません」と話すのは、ネコ科動物の保護団体「パンセラ」のピューマ・プログラムを率いる生態学者マーク・エルブロック氏だ。 ワシントン州で初めてオオカミがピューマに殺されたという報告があったのは、2013年のことだった。カスケード山脈の稜線で、1歳の低体重のメスが襲われた。2014年3月には、同じ群れに属していた2歳のオスが川のそばで殺された。 その1カ月後、今度は別の群れの6歳になる繁殖期のオスが、巣穴の近くで襲われた。さらに2019年には7歳のメス、2022年9月上旬には1歳のメス、そして同じ月にオオカミの子どもが犠牲となった。