中国での量産“暗礁”、JDIの死活問題「次世代有機EL」の多難
経営再建中のジャパン・ディスプレイ(JDI)にとって、独自技術による次世代有機ELパネル「eLEAP(イーリープ)」は、起死回生の切り札となる技術だ。2024年は大規模量産化をめぐる中国の地方政府との交渉が暗礁に乗り上げるなど、多難な年だった。 【写真】イーリープ技術を用いた車載パネル イーリープは従来型の有機ELと比べて輝度が2倍、寿命を3倍に延ばせる。さらに曲線を持つ自由な形状も作れるなどの特徴がある。25年3月期に11期連続で連結当期赤字を見込むJDIにとって、イーリープの事業化は死活問題になる。 JDIでは23年9月、中国・蕪湖市の技術開発区と基本合意書(MOU)を結び、将来的に現地で工場を稼働し、イーリープの量産に乗り出す方針だった。ところが最終契約の交渉は度々延期され、24年10月には計画が白紙撤回された。 JDIのスコット・キャロン会長兼最高経営責任者(CEO)は「地政学リスクが要因」と説明。米トランプ新政権の発足が25年1月に控える中、中国産製品に対する関税の大幅な引き上げが予想されるなど不確実性が増しており、経営判断を迫られた格好だ。 イーリープの小規模な量産はJDIの茂原工場(千葉県茂原市)で計画するが、大規模化には資金力を持つ外部との連携が不可欠になる。スコットCEOは「生産能力を拡大してイーリープのエコシステム(生態系)を作りたい。中国だけでなくインドや北米、欧州、中近東も含めて、候補先と協議をしている」と語るが、実現は未知数だ。 一方でJDIは12月3日、台湾の大手液晶パネルメーカーである群創光電(イノラックス)とイーリープの拡販で戦略提携を発表した。第1段としてJDIの開発したイーリープ技術を用いた車載向けパネルを27年に茂原工場で量産し、イノラックスの販売網を通じて拡販する。今後、さらなる協業も模索しており、外部パートナーの力も得ながら経営再建を目指す。