イグノーベル賞「股のぞき」研究に見る心理学の作法
誰もが納得する結論を導く科学的な手法
ここでご紹介したポイントは、心理学に限らず科学一般にもいえることです。ただ、特に心理学では、これらのポイントを丁寧に達成する過程で、ヘンテコに見えるシチュエーションが現れやすいようです。 しかし、ヘンテコな研究で人々を笑わせるだけではイグノーベル賞は受賞できません。「考えさせる」研究になるためには、誰もが納得する結論を導くための科学的な手法が必要です。日常では切り分けられない「こころ」の要因を、ヘンテコな条件で厳密に解きほぐす心理学。まだまだたくさんのイグノーベル賞候補が眠っていそうですね。
--------------------------------- (※1)…この記事では、2016年のイグノーベル賞受賞研究のうち、知覚心理学賞、経済学賞、医学賞、心理学賞、平和賞の5つを「心理学に関する研究」とした (※2)…東山先生の著書「体と手がつくる知覚世界(勁草書房)」では、実験に用いた赤い板は「二等辺三角形」となっているが、受賞対象となった論文では「長方形(rectangle)」となっていたため、長方形の板を用いた写真を記事では使用した
《参考文献》 ・東山先生らのイグノーベル賞受賞論文「Perceived size and perceived distance of targets viewed from between the legs: Evidence for proprioceptive theory」 ・「体と手がつくる知覚世界」(東山篤規著、勁草書房) ・「心理学研究法 心を見つめる科学のまなざし」(高野陽太郎・岡隆編、有斐閣) ・科学コミュニケーターブログ「祝!日本人10年連続イグノーベル賞受賞!~股からのぞくと、世界が変わる~」
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 志水正敏(しみず・まさとし) 1986年、熊本県生まれ。2013年より現職。生命の不思議に魅了され、大学院時代は70℃の温泉で生きられる細菌について研究。小惑星「リュウグウ」の名付け親の一人日本科学未来館では、研究者が来館者と実証実験を行うイベント「ともにつくるサイセンタン!」を担当