森保Jの最弱キルギス戦圧勝に何の意義があったのか?
アジアにおける戦いで、日本は引いて守る相手を攻めあぐねてきた歴史がある。そして、森保ジャパンが初めて臨む公式戦のアジアカップで、ウズベキスタン、トルクメニスタン両代表と同組になった。 ザックジャパン時代に苦戦を強いられたウズベキスタンはともかく、トルクメニスタンは自陣にブロックを形成して、乾坤一擲のカウンターを仕掛けてくるだろう。同じ中央アジア勢という状況も踏まえて、アジアカップに初めて出場するキルギスを年内最後の相手として選んだ点は理解できる。 しかし、アジアカップ対策を講じるのならば、主力組で臨まなければ意味をなさない。果たして、森保監督は現時点におけるベストメンバーを先発させ、1-1で引き分けた16日のベネズエラ代表戦(大分スポーツ公園総合競技場)から、先発全員を入れ替える決断を下した。 当初のプランを変更させたのは、ベネズエラ戦の後半にある。売り出し中の2列目トリオ、中島翔哉(ポルティモネンセSC)、南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(FCフローニンゲン)と1トップの大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)がベンチへ下がってからは、特に攻撃面でパフォーマンスが著しく低下した。 「チームとしてもう1セットできるくらい、もっと選手層の幅とチーム力をアップさせるために、より多くの選手が絡めるようにやっていかなければならない」 ベネズエラ戦後に口にした危機感が、キルギス戦の選手起用に反映されていた。リザーブでキックオフを迎えることが多かった選手たちに少しでも長くプレーさせて、個々の能力を解放させる。ただ、本当にチーム力をアップさせたいのならば、主力組とリザーブ組をミックスさせる作業が必要だった。 たとえば大迫に関しては「非常にいい選手であり、彼に代わる選手がいない現状がある」と指揮官は言及している。ならば大迫が不在となる状況を見越し、キルギス戦で1トップとして先発させた杉本健勇(セレッソ大阪)と若手三銃士を、同じピッチで共演させるべきではなかったのか。 あるいは、大迫と北川航也(清水エスパルス)、伊東純也(柏レイソル)らを長く一緒にプレーさせる。結果的には前者のプランは入れ違いになって実現せず、後者のそれは10分ちょっとしか続かなかった。特に攻撃面で顕著になっている、主力組とリザーブの差を埋められないまま貴重な90分間が終わった。 「力の差があるにしても現段階では当たり前というか、普通のことかなと思います。経験の浅い選手たちがベテラン選手や実力差がある選手と同じピッチに立つことで、相乗効果が生まれて両方の選手たちが成長や融合する。いまチャレンジしていることは、これからもチャンスがあれば続けていきたい」 キルギス戦をこう総括した森保監督は今週末から、日本サッカー協会の関塚隆技術委員長とともに渡欧することが決まった。J1戦線が佳境を迎えた国内組の視察ではなく、これまで招集しなかったヨーロッパ組の状態を自らの目でチェックする作業を優先させた。 フォワードではおそらく武藤嘉紀(ニューカッスル・ユナイテッド)や久保裕也(ニュルンベルク)、中盤では香川真司(ボルシア・ドルトムント)や乾貴士(レアル・ベティス)らが候補になる。彼らのもとを試合だけでなく練習の段階から訪れる可能性を、関塚技術委員長は否定しなかった。 「もちろん彼らはリストに入っていますし、招集に関してはまだまだいろいろな選択肢があると思います」 呼んでいない選手をぶっつけ本番でアジアカップへ招集する可能性を問われた指揮官は、こんな言葉を残したことがある。当初の青写真が二転三転した末に、杉本や北川らに見切りをつけたことだけがキルギス戦の収穫だとしたら――大量4ゴールを奪い、4勝1分けの無敗で2018年を締めくくった軌跡を、手放しで評価できない理由がここにある。 (文責・藤江直人/スポーツライター)