活況の半導体露光…ASML独走を追うキヤノン・ニコン、三者三様の開発戦略
ニーズ多様化に対応
第5世代通信(5G)スマートフォンの普及やデータセンター(DC)の増設、自動車の電動化などを背景に活況が続く半導体露光装置市場。蘭ASML、キヤノン、ニコンの大手3社のうち、唯一極端紫外線(EUV)露光装置の開発に成功しているASMLが市場トップを独走する。一方、キヤノン、ニコンも独自路線で差別化を図り、多様化する半導体メーカーのニーズに応える。三者三様の開発戦略を追った。 半導体はこれまで、回路線幅を細くすることで性能を高め、進化を遂げてきた。半導体回路の集積密度が1年半から2年で2倍になるという「ムーアの法則」はその象徴で、半導体露光装置メーカーも長年、微細化の実現に向けた装置の開発に主眼を置いていた。 ただ近年は、3次元積層など、微細化以外の方法で性能を高めようという開発の方向性も生まれており、半導体の製造プロセスが複雑化。微細化は引き続き半導体技術の革新をけん引するものの、半導体メーカーが装置に求めるニーズは多様化しつつある。 そんな市場ニーズの変化を背景に、露光装置各社は独自の開発戦略を描いている。
ASML、EUV供給を独占
「ムーアの法則は、今後10年以降も続いていく見通しで、それを中心的に支えるのが最先端のEUV露光装置だ」―。こう力を込めるのは、ASMLジャパン(東京都品川区)の藤原祥二郎社長。ASMLが供給を独占するEUVは、回路線幅7ナノメートル(ナノは10億分の1)以下のパターンを形成可能。5GスマホやDCなどで使われる先端半導体の製造では不可欠になっている。 現在、台湾積体電路製造(TSMC)など一部の半導体メーカーがEUV露光装置を用い、線幅5ナノメートルまでの半導体を量産。年内にも3ナノメートルの半導体量産に踏み切ると言われている。ASMLによると、2025年以降には、2ナノメートル以下のプロセスで使用されることを想定したEUV露光装置も実用化される見通し。 EUV露光は、演算処理などを行うロジック半導体での活用が主だが、最近では、パソコンなどのデータの一時記憶に使うDRAMでも活用が広がりつつあるようだ。