精神科医が語る「発達障害の空気を読めない同僚」に対処する具体策
『ストレスフリー超大全』の著者で精神科医の樺沢紫苑さんは、借金玉さんの著書『発達障害サバイバルガイド』について、「このリアリティ、具体性は当事者の経験あってのもの。精神科医や研究者には、絶対に書けません」と絶賛しています。 今回はYouTubeで実現した2人の対談「発達障害サバイバルライブ!(動画)」の内容を抜粋・編集してお届けします。(撮影/疋田千里) 【この記事の画像を見る】 (視聴者の質問) 「同僚が発達障害を持っています。どうやら会社には内緒にしているようで、空気を読めない発言や態度でお客様からクレームが入り困っています。対処法があれば教えてください」(36歳・女性) ● 対処しないという選択肢も持つ (二人の回答) 樺沢紫苑(以下、樺沢)「発達障害の人にどう向き合うべきか」は、よく受ける質問です。まず大前提として、発達障害は、本人が症状を自覚し、行動を変えない限りよくなることはありません。日本人は優しい人が多く、善意ベースで「何かをしてあげたい」と行動をとりますが、相手とのコミュニケーションに齟齬がある場合は、善意がストレスに転換する可能性をはらんでいます。残念に思う人もいるかもしれませんが、その人を変えることができるのはその人自身のみであって、他人には不可能なのです。 その上で、「発達障害にはどういう特徴があるのか」を理解していくことで、病状と行動に対する予測ができ、ある程度余裕をもって対応することができるようになると思います。 私の患者さんの中にも突然切れて暴れだす人はいるけれど、「あー、今こういう症状でこうした行動に出ているんだ」と、基本的に受け流し、静観するというスタンスでやっています。医師がとかく冷静に見えるのは、人間性が冷淡なのではなく(笑)、相手の症状を知ったうえで対応しているからなんですよ。 借金玉 そうですね。まず問題のありかを言語化する必要があります。発言のどこに問題があって、どう改善すべきなのかを当人はわかっていないわけですから、それを言葉にして教えるほかありません。例えばですが、もしお客さんにタメ口をきいているとするなら、「それはダメだよ」と、はっきり言ってあげるべきです。そして、問題を言語化するときに「発達障害」という言葉を用いる必要は必ずしもないでしょう。 それでも相手との関係がストレスになるのなら、距離をとる、逃げるということも大事だと思います。 人と人との関係性は、自分が「付き合っていこう」と認めてはじめて成立・持続するものです。義務的に付き合う必要なんてありません。家族はもちろん、職場の上司、部下、同僚の場合も同様です。職場のダメな同僚は、あくまで職場のダメな同僚で良いのです。 発達障害とストレスのどちらが体に悪いかと言えば、これはもう圧倒的に後者です。さらに言えば、発達障害はなくなりませんが、ストレスはなくせます。守るべきは、自分の健康と命。発達障害当事者と健常者の双方にとって、割り切った人間関係は大事だと思います。
借金玉