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「半沢直樹」は日本のオトーサン向けのファンタジーだった【桧山珠美 あれもこれも言わせて】

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日刊ゲンダイDIGITAL

【あれもこれも言わせて】  終わってみれば、最終回の視聴率が32・7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)という驚きの数字を叩き出したTBS系日曜劇場「半沢直樹」。前作から7年、さんざん待たされた視聴者もその甲斐あったと満足しているのではないか。  今回の立役者はなんといっても元祖・顔芸の大和田取締役・香川照之。  前半のキーマンとなった、いとこの市川猿之助にじかに顔芸を伝授したと話題になっていたが、猿之助のみならず、錚々たる俳優が香川に負けじと渾身の顔芸を披露。気がつけば半沢役の堺雅人まで立派な顔芸役者に仕立て上げた。  それだけではない。自身のツイッターを駆使してPRにも余念がなかった。たとえば、「半沢直樹の4話は、もう本当に伝説の回になります…www いよいよ大詰めの、猿之助さんとの親戚漫才をどうかお楽しみ下さい!」「第6話、ついに土下座が炸裂しました…」「7話で曽根崎に浴びせた『さあ、さあ、さーアサァサァサァ!』は歌舞伎の常套句。堺さんも完璧な間の取り方でしたww」などなど。TBSの広報も顔負けの番宣をやっていた。 ■令和の日本人が失った忠義や愛社精神などが満載  香川の貢献はともかくここまで愛される理由は何か。よく言われるのは「半沢直樹」=時代劇説。「やられたらやり返す、倍返しだ!」は「水戸黄門」の印籠のようなもの。最後に悪者がやり込められる構図は時代劇そのもの。  他でやっていたら確実に笑ってしまいそうな芝居も「半沢」だから成立してしまう。演者も視聴者も、なにやら「半沢~ズハイ」って感じで、どんどん気持ちよくなるようなところがあった。  冷静になってみれば怒鳴り散らし、口角泡を飛ばし、飛沫飛ばしまくりの3密上等、「土下座」の強要を筆頭にやってることはパワハラ、モラハラ、マウントの取り合いと現実にやったらえらいこっちゃなことだらけ。  加えて上司への忠義や同期の絆、愛社精神など令和の今、日本人が失いかけているものが満載なのだ。  現実社会でやってはいけないことを見て喜んでいるということは日本人の心のどこかに、そういうものを肯定する気持ちがあるのでは。部下を叱ればパワハラ呼ばわり、OLの服装を褒めればセクハラ呼ばわり、何かと面倒な社会で空気を読みながら生きなければいけない現代人にとってこんな痛快なドラマはない。  さらに、昨今は「恋つづ」やら「ナギサさん」やら女性が楽しめるドラマは多いが、男が楽しめるドラマは少ない。女が圧倒的に強い時代、トイレが汚れるから座って用を足せと家庭でしつけられているオトーサンのたまりにたまったストレスの行き場がどんどんなくなっている。 「半沢直樹」は男性に向けたファンタジーだからここまで支持された。裏を返せば、それだけストレスを抱えたオトーサンが多いということ。もっとおじさんが楽しめるドラマを! (桧山珠美/コラムニスト)

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