美容院、常連客の「ドタキャン」繰り返しに苦悩…キャンセル料はどこまで請求できる?
東京で美容院を経営するOさん(40代・男性)は、予約の「ドタキャン」を繰り返す常連客に頭を悩ませています。 Oさんによれば、問題の常連客は、ドタキャンの常習犯。ただ「本当に来店することもあるので、予約を断ることまでは考えていないんですよね」と話しました。 Oさんの美容院は、妻と美容学校を卒業したばかりの若手スタッフ1名でやりくりする、こじんまりとした美容院です。飛び入りの客が来るなら別ですが、ドタキャン客のため、週末の忙しい時間帯にもぽっかりと手持ち無沙汰の時間ができてしまっています。 予約のキャンセルを繰り返す客に、美容院はキャンセル料を請求することは法的に可能なのでしょうか。また、予約を断るような対応をすることはできるのでしょうか。萱垣佑樹弁護士の解説をお届けします。 ●キャンセル料は請求できるが… ーー予約のキャンセルを繰り返す客に対して、美容院はキャンセル料を請求することはできるのでしょうか。 結論としては、「キャンセル料を請求することはできるが、キャンセル料は平均的な損害の額を超えることはできない」ということになります。 まず、美容院に予約をすることは、「予約」という言葉を使っていても、法的には「契約」と考えられることが多いと思います。 つまり、美容院に対する予約は、改めて本契約をすることを予定しておらず、美容院の予約の時点で契約が成立していると考えられる場合が多いのです。 そうだとすれば、予約したのにキャンセルをすることは、法的には債務不履行となり、損害賠償(キャンセル料)を請求できることになります(民法415条)。 ●請求できる「平均的な損害」とは? ーーキャンセル料は「平均的な損害」の額を超えることはできないとのことですが、「平均的な損害」とは具体的にどの程度の額を意味するのでしょうか。 まず、法外なキャンセル料は請求できません。また、キャンセル料の金額を事前に決めてその金額を請求できるかというと、それも問題があります。 「美容院」と「お客さん」は、「事業者」と「消費者」の関係にあるため、消費者契約法が適用されます。 そして、消費者契約法9条1号によると、損害賠償額(キャンセル料)の予定の合意がある場合、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」については、平均的な損害を超える部分が無効とされています。 したがって、高額なキャンセル料を請求したり、設定したりしたとしても、それは無効とされる可能性が高いでしょう。 今回のケースのように、キャンセルされた時間帯に他の予約を入れることができないのでしたら、本来かかる美容院代から経費を引いた額が「平均的な損害」と認められる可能性もあります。 ですが、お客様相手の商売ですから、キャンセル料を設定するとしても、もっと低い額を設定した方が良いかもしれません。 ●そもそも予約を断ることはできる? ーー美容院は、キャンセルを繰り返す客の予約を断ることはできるのでしょうか。 もちろん可能です。誰と契約をするかは、美容院の自由ですから、お客さんを断ることは法的には問題ありません。 (弁護士ドットコムライフ) 【取材協力弁護士】 萱垣 佑樹(かやがき・ゆうき)弁護士 平成25年登録。父親も弁護士で、小さいころから困った人を助けたいという気持ちが自然と養われ、現在、意欲的に弁護士としての活動に取り組んでいる。相談に来た人と同じ気持ちになって解決することが目標。 事務所名:万朶総合法律事務所
弁護士ドットコムニュース編集部