宇宙まで漏れる明るさは必要なのか エネルギー浪費、温暖化…光害に専門家が警鐘
光害に、私たちはどう取り組んでいけばいいのか。ダークスカイ・ジャパン(旧・国際ダークスカイ協会東京支部)代表で東洋大の越智信彰准教授に聞いた。(聞き手・構成=藤崎麻里) 【動画】約30年でこんなに増えた東京の人工の光 深刻化する光害
越智信彰(おち・のぶあき)
ダークスカイ・ジャパン代表 東洋大准教授。専門分野は環境教育で、光害の研究を中心とする国内で数少ない研究者。光害に関するルールづくりにもたずさわり、環境省の委員を歴任。各地の自治体の光害防止条例に関わる。
人工衛星に搭載されたカメラで撮影された画像でみると、日本は列島の形が浮かび上がるくらい、世界で最も明るい地域の一つです。 明るい光は人々の活動の証しですが、宇宙にまで漏れる光は本来必要ない。照明器具が水道の蛇口だとすれば、空に向けて漏れている光は、蛇口から漏れている水です。すぐに修理をしなければいけません。照明の使い方を工夫して可能な限り抑えるべきです。大量に光を消費する社会は、エネルギーの大量浪費、地球温暖化にもつながります。
今、急速に普及しているLED照明は、省エネで長持ちとメリットもありますが、今の使い方ではデメリットも目立ちます。明るさばかりを追い求め、光害に配慮しているとは言いがたいからです。 質の良い照明というのは、必要な場所だけを必要な量の明るさで必要な時間だけ照らすもの。LED照明は本来、光の当て方も調整できます。光の色も光害対策に重要ですが、LED照明は光の強さや色を変化させるような制御もできます。LEDは、使い方次第なのです。 日本はなぜこんなに明るいのか。戦後、海外から入ってきた蛍光灯の白さ、明るさに驚き、近代化の象徴だと印象づけられた人が多かったそうです。欧米では公共空間は蛍光灯の白い光、屋内は電球色と分けて使われましたが、日本では屋内外で蛍光灯が使われました。 LEDに切り替える際も、同じ明るさが好まれ、置き換えられているのが現状です。自然の光のリズムに近づけ、夜間は白すぎない夜らしい照明にし、体内時計や生態系への影響を抑えるべきです。 必要なのは、光害に関する教育も含め、「明るいことは良いこと」といった意識の転換です。また照明メーカーや自治体の間で光害対策型の照明を積極的に開発、導入する仕組みができないかを考えています。環境に配慮した照明の認証制度を作ることも一案です。同時に光害対策に一定の法的な強制力を持たせられれば、広めやすいのではないかとも考えています。
朝日新聞社