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ラン・ザ・ジュエルズが語る「クソみたいな世界」への回答、前進のサウンドトラック

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Rolling Stone Japan

反人種差別運動が続くなか、キラー・マイクとEl-Pによるラン・ザ・ジュエルズのニューアルバム『RTJ4』が大きな話題を集めている。40代の今も最前線に立ち続けるヒップホップ・デュオが、黒人コミュニティの怒り、ヒーローとしての強さと内面に抱える弱さ、トランプ政権がアメリカンホラーの最新チャプターたる理由について語った。 その物語は架空のTV番組のイントロで幕を開け、銃撃戦と逃亡を経て、ハードコア・アジットポップ・ラップ版『テルマ&ルイーズ』というべき2人のアウトローが旅に出る。痛快なストーリーの主役である2人の大人は、銃を構える部隊に中指を突き立てつつ、それぞれの心境について吐露していく。SF的ディストピアで奮起するコンシャスなファック・ユー・アティテュード、濃密なリリック、巧みなワードプレイ、そして怒りに火を注ぐようなムーディなビート。ラン・ザ・ジュエルズの新作『RTJ4』で描かれる37分間の物語は、El-Pとキラー・マイクというダイナミックなデュオの魅力に満ちている。気心の知れた2人は互いの言葉を補完し、それぞれのスタイルに賛辞を送りながら、銃と拳という彼らのシンボルを高々と掲げてみせる。つまり、本作でもRTJは100パーセント健在だということだ。 それでいて、『RTJ4』と過去作の間には明確な違いがある。ふざけたジョーク、バトルラップ的な口撃はなりを潜め、黙示録的なユーモアのセンスがより前面に押し出されている。「Yankee and the Brave」や「Holy Calamafuck」等は緊迫感に満ちていながら、『パルプ・フィクション』のようなファンタジー感を演出している。El-Pが「Goonies vs. E.T.」で「憤怒に満ちた過去/狂ってしまった恋人」とライムすると、マイクは続くヴァースで「くだらない奴らに催眠術をかけられ、ツイッターの虜にされてしまった」仲間たちに目を覚ませと呼びかける。ハイライトと言える「Walking in the Snow」「A Few Words for the Firing Squad」「Pulling the Pin」(メイヴィス・ステイプルズによるキラーフックをフィーチャー)等では、社会的問題を身近な人間関係に置き換えたかと思えば、その逆の手法を取ることもある。El-Pの他、Little ShalimarやWilder Zobyを含むゲストプロデューサーが手がけたトラックでは、ギャング・スターやギャング・オブ・フォーをサンプリングするなど、プロダクションの面でも隙はまるで見られない。 「前作は炎と水、そして曇り空のイメージだった」2016年作の通称「ブルー」アルバムこと『RTJ3』について、El-Pはそう話す。「でも今作にあるのは、燃え盛る炎だけだ」 ラン・ザ・ジュエルズは10年に及ぶ活動を経て、ミックステープを基本とするサイドプロジェクトから大型フェスのヘッドライナーを務めるまでに成長した。怒りに満ち、図らずも今という激動の時代とシンクロした本作は、彼らの最高傑作と言っていいだろう。当初、彼らは4月に本作を発表し(過去作と同様に、ウェブサイトでの無料ダウンロードを予定していた)、その後レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの再結成ツアーに前座として同行することになっていた。しかしパンデミックによってコンサートの開催が当面不可能になると、2人は本作の発表を6月5日に延期することを決めた。そしてジョージ・フロイド、ブレオナ・テイラーの死に対する抗議デモが全米に拡大するなか、2人は『RTJ4』を数日前倒ししてリリースした(「世界はクソみたいな出来事で覆い尽くされてしまってる」彼らのステートメントにはそう記されていた。「このリアルなアルバムを、踏ん張り続けている人々が楽しんでくれるよう願っている」)。エリック・ガーナーの死に言及した「Walking in the Snow」や、「革命はテレビで流れることもなければ、ネット上に出回ることもない」といったラインは、本作がまるで現在の状況について歌っているかのように感じさせる。彼らは今作が、「前進のためのサウンドトラック」になったと語る。「ちょうど昨日、ある活動家からこう言われたよ。『お前らのアルバム、今の俺の気持ちを完全に代弁してくれてる』ってね」マイクはそう話す。 ラン・ザ・ジュエルズはZoomを使った1時間に及ぶインタビューで(El-Pはニューヨークのアップステート、マイクはアトランタにある自宅のポーチから参加。取材の間中ずっと、両者ともクサを吸っていたと思われる)、『RTJ4』の制作過程、本作が過去作よりもパーソナルだとする見方についての見解、現在ストリートを覆っている怒りの根深さ等について語ってくれた。

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