ウォール街、米国債買いを再開-最悪過ぎ安全とみるベテラン勢も
(ブルームバーグ): ブラックロックやTロウ・プライス・グループなど債券市場のブームと破裂を知る運用会社やベテラン投資家は、米国債の買いを再開しても安全だという兆候を見て取っている。
インフレが依然40年ぶり高水準にあり連邦準備制度の積極的利上げサイクルもまだ初期にある今、底を打ったという人はほとんどいないが、利回りが今年に入って大幅に上昇し10年債ではほぼ2倍になっている状況は過去の買い場を連想させる。
さらに、小売り大手が個人消費動向の変化を報告、住宅販売が減少傾向になるなど景気減速の兆しもある。また、成長株や暗号資産(仮想通貨)などリスク資産が売り込まれ、米国債の安全資産としての価値が浮き彫りになった。利回りが今月ピークになった時点で購入した人には利益が出た。
これら全てを、ベテランの運用者たちは慎重ながらエクスポージャーを増やし始める理由だとみている。利回りが適正水準を上回ったと考えられる時には買いを加速させる準備をしている投資家もいる。JPモルガン・アセット・マネジメントの世界金利責任者シーマス・マクゴレーン氏は利上げの大部分は既に織り込まれたため最悪期は過ぎた可能性が高いと指摘した。
Tロウ・プライス・インベストメント・マネジメントの投資戦略責任者デービッド・ジルー氏は「多くの悪いニュースが織り込み済みの段階に来つつある」として、10年債利回りが3%余りでピークとなった2013年と18年に環境が似ていると分析。「現金を減らして米国債を買っている」と述べた。
センチメントの変化は明らかだ。9日に一時3.2%に達していた10年債利回りは23日、2.85%前後だった。他の年限でも同様に低下した。
ただ、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はインフレが低下しつつあるという明確で説得力のある証拠が見られるまで、中立金利の水準を超えて利上げをする用意があると述べており、不確実性は根強い。