【書評】主人公は男装した姫君!? 皇子との運命的な出会いからはじまる平安ファンタジー!
平安時代に日本にもたらされた、占星術の一種である「宿曜道(すくようどう)」。宿曜道では、人は生まれたときの日時と星の位置でおおよその運命が決まるといわれている。そんな、人の運命を読み解くことができる人物を「宿曜師」と呼ぶ。 【漫画】本編を読む
主人公・小夜は、時の権力者・大納言「藤原家」の四番目の姫。貴族の娘として大事に育てられてきたものの、平安時代の女性に必要な琴の演奏や和歌などの素質がまったくなかった。代わりに、星を見ると自然と頭に言葉が浮かぶという天性の才能を持っているのだが、平安時代の宿曜師は男性しかなれない職業だった。 夜空を見るのに夢中な小夜は、日中に居眠りしてしまい「居眠り姫」と呼ばれていた。12歳のとき、そうした生活態度は宿命なのかどうかを占うため、宿曜師・賀茂信明を呼ばれてしまう。だが、信明のおかげで星のことをこっそり学べるようになり、その運命は大きく変わりはじめる。信明に連れ出してもらったある夜、小夜が出会ったのはやんごとない身分にもかかわらず、凶日に生まれただけで“忌子”と呼ばれる少年・千尋だった。 宿曜の結果のせいで、何の落ち度もないのに絶望を抱えて生きてきた千尋。しかし、そんな千尋に希望を与えてくれたのは、小夜の読んだ宿曜だった。他の宿曜師は千尋に「水難に遭うため外出禁止」と伝える中、小夜だけは「大した事ない」と言い切ってくれたのだ。実際、占いで見えた水難とは雨に打たれる程度のことで、大げさに捉える必要はない。千尋の自由を奪うためだけの宿曜を、怖くないから大丈夫だと打ち破ってくれた。 こうして小夜に希望をもらった千尋の人生は、明るい未来へ変化しはじめ――。 結婚からの逃走騒ぎがきっかけで、信明の息子・志信に成り代わり、宿曜師として出仕することになった小夜。もちろん、入れ替わりが周囲にバレてしまえば、信明も小夜もただでは済まない。しかし、そんなリスクを冒してでも、かつて千尋にいわれた「専属宿曜師になってほしい」という言葉を叶えようとしていた。 あの夜出会った2人は、再び運命の邂逅を果たすことになる。男装して働く小夜と、忌子といわれた千尋の人生はどのように交わっていくのだろうか。2人を巡る運命の行方から、今後も目が離せない。