連合赤軍事件、無期懲役囚の仮釈放を待つ91歳弁護士 立ちはだかる「マル特通達」の壁
古畑さんは2017年に吉野受刑者の身元引受人になり、手紙のやり取りや刑務所での面会を続けている。吉野受刑者の実家が都内に残されており、その管理も行っている。 ただ、吉野受刑者には大きな壁が立ちはだかっている。それが「マル特無期通達」の存在だ。 1998年に最高検が出した通達のことで、「無期懲役刑受刑者の中でも特に犯情等が悪質な者」を「マル特無期」として扱い、「従来の慣行等にとらわれることなく、相当長期間にわたり服役させることに意を用いた権限行使等をすべきである」としたものだ。 どのような条件でマル特無期に指定するのかを検察は明らかにしていないが、死刑が求刑された事件などが対象になっていると見られている。
●「内部通達の運用で密かに終身刑化」
古畑さんによると、吉野受刑者は刑務所で模範囚として生活しているというが、事件の被害者が多数に上り裁判で死刑を求刑されたことが半世紀以上経った今も仮釈放が認められない要因の一つと見ている。 「仮釈放されたら彼は被害者遺族へのお詫びに回りたいと言っています。今出てきても彼が再犯する可能性は全くありません」
そう断言する古畑さんは、近年、無期懲役刑が「終身刑」となりつつある現状に強い疑問を示す。 「今の無期懲役刑は、法律に基づかずに内部通達の運用によって密かに終身刑とされています。刑事収容施設法には『受刑者の処遇は、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うものとする』と書かれていますが、全く反映されていません。無期懲役囚は見捨てられた犯罪者群というような感じがします」
●「受刑者の処遇を人間味のあるものに」
被疑者を取り調べる検事と、罪を犯した者の立ち直りを支援する弁護士という二つの立場を経験したが、一貫して「生まれながらの犯罪者はいない」「どんな罪を犯した人でも変わり得る」と信じている。 「私もいつどこかで罪に問われることがあったかもしれず、たまたま家族や友人など周りの人間関係に恵まれていただけだと思うことがあります。事件を起こした人を一人一人見ていくと、それぞれに事情や理由があります」 来年には懲役刑と禁固刑が一本化され「拘禁刑」が導入される。刑事司法にとって過去にないほどの大転換期に差し掛かっており、古畑さんはこう期待を込めて語る。 「日本では無期懲役に関する情報が少ないため、無期懲役囚の心情や境遇についてあまり議論されていません。今、刑事政策が大きく変わりつつあるので、受刑者の処遇も人間味のあるものにしてほしい」