「日本の政治家」が「中国共産党」に圧倒的に負けているポイントがあった…その「深刻な現状」
常に成功を求められ、停滞は党指導部の転覆に繋がるが故に、焦燥感に駆られたトライアルアンドエラー的発想で政策を進める中国政府。横暴とも取られるが結果としてそれが国家の成長に繋がっている。他方、政治構造の停滞から国民からの突き上げ圧力が少ない日本の政治家たちは既得権益層を優遇した保守的政策に走りがち。なのでいつになってもこの低迷状態から抜け出せないでいる。中国研究者でありインドの国立大学研究フェローの中川コージ氏は、『日本が勝つための経済安全保障――エコノミック・インテリジェンス』(ワニブックス刊)にて日本の政治家たちの在り方を問うている。本書より一部を抜粋編集してお届けする。 【写真】中国が「福島原発の処理水放出」を問題視した「ほんとうの理由」
「日本の自画像」に立ち返る必要
日本人として心理的にスカッとしたい気持ちは非常によく理解できますが、日本には中国の経済停滞を小馬鹿に非難して溜飲を下げている暇はないはずです。我々はもう一度「日本の自画像」に立ち返る必要があります。 日本では米中の施策に目を奪われて、「宇宙、AIなど派手なところに一点集中投資すべきだ」となりがちですが、ここでも「超大国である米中」と「地域大国ないしは非超大国である日本」という自己認識に更新する必要があります。もちろんある先端分野で日本が総花的に他国をリードできればそれに越したことはありませんが、「本当に最先端の◯◯事業で中国と競り合う必要があるのか」「もっとニッチなセグメントを攻めることを考えるべきではないか」という観点を持つことも非常に重要です。 「二位じゃダメなんですか」という某政治家のフレーズが亡霊のように言論空間を漂っていますが、やはり当初から二位や三位狙いというのは微妙なパフォーマンスしか生み出さないものです。 狭くても特定の分野で一位を狙い難いのであれば、その分野への投資を控えて別の効率性の高い領域に回すというのが合理的でしょう。
日本はあらゆる産業がそろっている
日本は他国と比べて、一次産業から三次産業までのあらゆる産業がそろっているところに特徴があります。徹底的にこだわって品種改良される農業や、ヘルスメディカルの分野では、他国の追随を許さない日本ならではの発展も見込めます。宇宙やAIといった先端技術も良いのですが、それらに総花的な投資をして無理に米中と渡り合おうとするよりも、渋くても日本の得意分野を見極めて投資することで、「十分食っていける」産業を伸ばすことも、本当の意味での「経済安全保障(経済面から、日本国民の安全な暮らしを保障する)」に資するのではないでしょうか。 ちなみに、実際に政府は振興対象産業の減税等支援策を超え、超大国がしのぎを削る分野を中心対象として「基金」を設けサポートし始めています。仮に、その対象が総花型ではなく特定分野に限定しているとしても、次の問題は、政府が見極めた特定分野は何の情報に基づいて「イケる」と判断しているのか、政府支援後のチェックを厳しくしているか、というものになります。 インテリジェンス機関が脆弱な日本の政府が投資判断を間違わないというのは難しいのではないか、99失敗しても1の成功を良しとするベンチャー投資的手法を逆手にとって免罪符とし失敗を過度に容認しようとしていまいか、誰が投資妥当性を事後トラッキングチェックするのか、それこそ官僚設計主義の誤謬に陥るのではないか、といったイデオロギー上の問題を生み出すことになります。