コロナ禍で「ひとりぼっち」? 困窮し、妹にご飯を食べさせる余裕もない…児童養護施設出身者が抱える孤独
新型コロナウイルスは多くの人々に影響を与えた。厚生労働省は9月24日、新型コロナに関連する雇い止めは6万人を超えたと発表した。そのような中、東京ボランティア・市民活動センターは6月、ゴールドマン・サックスから約4000万円の資金提供を受け、全国児童養護施設協議会と連携し、全国各地の児童養護施設の退所生へ支援を届ける「アウトリーチ・プロジェクト」を実施した。背景には困窮に陥りやすい、児童養護施設を巣立った若者を取り巻く現状がある。なぜ、困窮に陥りやすいのか。そして、どのような支援が必要とされているのだろうか。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】
「アウトリーチ・プロジェクト」、その狙いは?
「アウトリーチ・プロジェクト」は、全国の児童養護施設に協力を呼びかけ、うち3分の1に相当する187施設と連携し、ゴールドマン・サックスから支援を受けたことで実現した支援策だ。 「誰が今、ひとりぼっちになってしまうのだろうか?」 そんな問いからこのプロジェクトが始まったと、東京ボランティア・市民活動センター所長の山崎美貴子さんは明かす。 児童養護施設で育った若者たちは、多くの場合、18歳で施設を巣立ち、自立することを求められる。
施設出身者の大学進学率は26.5%、仮に進学したとしても経済的・精神的な理由などで26.5%が中退することが、NPO法人ブリッジフォアスマイルが実施した「全国児童養護施設調査2016」によって明らかになっている。 退所生の多くは就職の道を選ぶが、就職を選んだ若者も48.7%が3年以内に退職しており、社会的養護で育った若者の自立は容易ではない。 退所した若者たちの中には労働条件が悪い仕事に就くケースなどもあり、生活困窮に陥りやすい側面もある。 必要なものは金銭的支援、就労支援のような具体的な支援策だけではない。愛着障害や発達障害、精神障害を抱えた若者は一定期間伴走してくれる信頼できる大人を必要としている。 新型コロナの影響が社会全体に拡大する中で、そうした退所生が「一人暮らしの状態で経済的困窮状態はもちろんのこと、相談する人が身の回りにいないため、ひとりぼっちになってしまっているのではないか」。そう危惧したと、山崎さんは言う。 児童養護施設を退所した若者は経済的困窮に陥りやすい他、孤立や孤独を抱えやすく、支援の情報が届きにくい傾向にある。そのため、退所生への支援が必要であると山崎さんらは考えた。