スプリンターズSを制したルガル（撮影・鈴木正人）

＜スプリンターズS＞◇29日＝中山◇G1◇芝1200メートル◇3歳上◇出走16頭 　ダート1800メートルの新馬戦デビューからスプリント王者へ－。ルガル（牡4、杉山晴）を生産した北海道浦河町の名門、三嶋牧場の三嶋健一郎取締役は「当歳時は立派で見栄えのする馬でした。クラシックディスタンスを意識した配合で、ダートの長いところからのデビューでしたが、まさかスプリンターになるとは…」と、驚きを隠さなかった。ルガルの新馬戦は22年11月、阪神ダート1800メートル戦で、9頭立ての9着だった。 　同牧場は今年の天皇賞・春（テーオーロイヤル）に続くG1勝利で、21年安田記念（ダノンキングリー）、23年高松宮記念（ファストフォース）と合わせて4勝目となった。「春、秋と今年は出来過ぎですね」と笑みを浮かべる。ルガルの下の当歳馬は父コントレイルの牡馬で、母アタブは現在、イクイノックスの子を受胎しているという。 　超ハイペースの3番手から押し切った爆発的なスピードとパワーから感じるのは、ルガルに流れる名牝の血だ。4代母はミエスク。現役時代はG1を10勝し、母としては種牡馬として成功したキングマンボ、仏2冠牝馬イーストオブザムーン（ルガルの3代母）などを出し、世界中にその血は広がっている。日本ではこの牝系からリアルスティール、ラヴズオンリーユーなどが出ているし、イーストオブザムーンからはアイルランドの名牝アルファセントーリが出た。 　母アタブは18年にアイルランドのゴフス社ノベンバーブリーディングストックセールで落札されているが、その落札額はわずか3万5000ユーロ（現在のレートで約560万円）だった。当時受胎していたムカドラムの子が19年に三嶋牧場で誕生（馬名はトウシンイマジ）し、20年に誕生したのがルガル。この牝系の可能性にかけた生産者の慧眼が新たなスプリント王者を誕生させた。