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【論説】英総選挙、ジョンソン首相の利己的な計算

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The Guardian

 テリーザ・メイ前英首相は、2017年に解散総選挙を決めた時、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を争点とした。確かに当時の有権者の頭の中はブレグジットでいっぱいだったが、それはメイ首相の力にはならなかった。ボリス・ジョンソン首相も似たような過ちを犯す瀬戸際にいるかもしれない。  ジョンソン首相は長らく求めていた総選挙を控え、ブレグジットの第1段階で有権者が抱いている疲労感を武器にし、ブレグジットの遅延の責任を「EU残留派」の議会に転嫁したいと考えている。反対勢力の基盤を無気力にさせたいと願っているのだ。12月に総選挙が行われるのは、1923年以来で初めてとなるが、国政選挙の12月実施が避けられてきたのには理由がある。国が直面している問題がいかに重要であろうとも、寒くて日が暮れるのが早い12月は、遊説したり集会や投票所に人を集めたりするのに理想的な条件とは言い難いからだ。  そのような計算は、有権者に対する侮辱だ。ジョンソン首相は、今回の総選挙が自分や保守党のためではなく、国民のためだとの印象を与えるために世論を操作しようとした。ジョンソン氏は首相就任後、EUと協議せずに時間を無駄にし、その後、審議での追及を避けるために違法に議会を閉会した。それから離脱協定案をまとめたが、EUには受け入れてもらえず、早急な修正を迫られた。  EUとの合意がないまま、あるいは英国の雇用や経済、北アイルランドでの和平やスコットランドとの連合が脅威にさらされるような条件で、英国がEUから放り出されることを下院議員が許すわけがなかった。ジョンソン首相が適切な手続きを無視することを、裁判所と下院議員が許さなかった点は評価できる。これを許せば将来、政府がもっと悪意ある目的のためにこの前例を盾にする可能性が出てくるからだ。だが、ジョンソン氏はそのようなことを構いはしない。彼の計算は、むき出しの私欲と権力だけを中心に回っているのだ。  民主主義とは、利己的な計算以上のものであるべきだ。そこに熱意がない行為へと国を無理やり向かわせれば、それこそ離脱派がよくののしるように、政治への嫌悪感を強めることになる。下院議員らは先ごろ、EU離脱協定法案という形でブレグジットに賛成票を投じた。ジョンソン氏はそのまま下院で離脱を押し進めることができたかもしれない。しかしそれは、反対派の視点の多様性を受け入れられるだけの、知的洗練度に欠ける同氏の政治手腕では無理だったのだろう。代わりに、虚偽と逃避で彩られた政治経歴を持つジョンソン首相は、政治広告のうそが許されるフェイスブックのようなプラットホームで、自らが動員できるプロパガンダに支えられた、汚れた選挙を戦いたいと願っているのだ。  選挙戦の争点の中心はブレグジットになるだろう。誰も驚きはしない。国民投票によるEU離脱の要求と、ダメージを最小限に抑えたブレグジット妥協案を成立させるよう要求する議会の間の緊張に対処することは、次の政府にとっても引き続き最大の務めとなるだろう。しかし経済、格差、緊縮財政など、さらに多くの争点が前面に押し出されてきている。右派では、ジョンソン氏やブレグジット党のナイジェル・ファラージ党首のような主要人物は、一部の有権者をおびえさせ遠ざけている。だが彼らに対抗するのは、世論調査で多くの有権者が嫌い、または信用ならないと答えている政治家たちだ。もし、こうした状況にめまいを覚えることがなかったとしても、歴史が形成されようとしているこの間、混乱に向けて心の準備をしておいた方がいいだろう。 【翻訳編集】AFPBB News 「ガーディアン」とは:1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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