【松浦鉄道編】カッパッパ~ルッパパ~♪佐賀のミステリーゾーンへ行ってキューリ《女子鉄ひとりたび》22番線
元祖鉄道アイドル、今は「鉄旅タレント」として鉄道をアツく語る、木村裕子が日本各地の魅力的な路線を紹介する“女子鉄ひとりたび”(『女子鉄ひとりたび』著・木村裕子より)。好奇心満点の「永遠の少女」である著者は、鉄道と同じくらいオカルトで不思議なものが大好き。九州・松浦鉄道のとある小さな駅で、彼女を待っていたものは一体……? この記事の写真はこちら ■なぜか造り酒屋に眠るトンでもないお宝! 松浦鉄道の伊万里(いまり)駅は、JRとは道路を一本挟んだ位置にある。国鉄松浦線だった時代は一つの駅だったとのこと。ちなみに、そのころは松浦線にも、博多方面から直通する列車があったという。 ホームで待っていたディーゼルカーに乗ると、車内には沿線の幼稚園児と小学生が描いた列車の絵で、吊り広告部分が埋まっている。中には、車両に付いている冷房機器や窓のちょっとした違いまで細部にこだわって描かれた、鉄道愛あふれる作品もある。その表現力から、その子の鉄ヲタ度がわかっておもしろい。 眺めていると、1両だけの列車はディーゼルカー特有の大きなエンジン音を上げて出発した。 伊万里の次の東山代(ひがしやましろ)駅は、昔使用されていた駅舎が民家になっている。雨戸が閉まっていて家の中は見えないが、リビングらしき位置にある窓の外はホームという造り。列車が駅に停車したときに家を出ても、乗り遅れの心配はなさそう。駅徒歩0分のうえに、自宅から車内まで3歩ほどで行けてしまう。都会の高級タワーマンションよりも、こんな家に憧れる。 最初に降りたのは楠久(くすく)駅。北へ徒歩5分の「松浦一酒造(まつうらいちしゅぞう)」へ。 ここに来たかったのは、カッパのミイラが祀(まつ)ってあるからだ。ことの真偽を問うつもりは全くない。そんなことよりも、そこに実在するという部分にフォーカスを当てた方が何倍も楽しい。 「おはようございます。河童を見に来ました!」と、受付を済ませる。この日の見学者は私ひとりで、蔵元の田尻さんがマンツーマンで解説してくれた。 「この家には先祖代々の言い伝えで、変わったものがあると言われていたんですが、それが何かはわからなかったんです。1953年に蔵の修繕をしたとき、大工さんに『梁(はり)の上に箱がある』と発見され、開けるとこれが入っていました。手の指が5本、足には水かきが付いた3本の指、頭には皿が乗っかっていました」 「さらに調べると、『河伯(かっぱ)』と墨書きされた紙が見つかり、九州はカッパ伝説があることから、間違いないと断定。カッパは水と関係する生き物で、お酒も水に関わるため守り神として祀ってあります」 「噂を聞いた有名大学の研究者など、全国から真実を確かめに調査に来る方もいますが、丁重にお断りさせていただいています。真偽よりも、目の前にあることが全てだと信じているからです」 説明を聞いて、その考え方に心の底から共感してしまい、田尻さんと熱い握手を交わしたのだった。 河伯が祀られている蔵には、多数のカッパコレクションや昔の酒造道具、農機具なども展示されている。田尻さんはカッパが大好きなようだ。 そこで、JR 久大(きゅうだい)本線・田主丸(たぬしまる)駅の駅舎は、「カッパの形をしていて可愛い」と伝えると、目を輝かせて「ぜひ行きたい!」と喜んでくれた。(トップ写真参照) 展示スペースは自由に見学でき、事前に予約すれば蔵の案内もしてもらえる。 (次回へ続く)
図版・戸澤徹