落合陽一×樋口真嗣(映画監督)「日本特撮の現在・過去・未来 ゴジラからシン・ゴジラ、そしてシン・ウルトラマンへ!」【前編】
映画監督・樋口真嗣(ひぐち・しんじ)は実写(とりわけ特撮)とアニメを行き来しながら制作を続けている。実写では長編映画監督デビュー作『ローレライ』(2005年)以来、『日本沈没』(06年)、『のぼうの城』(12年、犬童一心との共同監督)、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(15年)、そして『シン・ゴジラ』(16年)と話題作、ヒット作を連発してきた。 【画像】『シン・ゴジラ』と第2形態、通称・蒲田くん アニメでは、あの『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズをはじめ『ふしぎの海のナディア』、『宇宙戦艦ヤマト2199』など多くの作品に携わり、最近では『ひそねとまそたん』の総監督を務めた。そして現在は、盟友・庵野秀明(あんの・ひであき)とまたもタッグを組み、映画『シン・ウルトラマン』を製作中だ! そんな樋口が学生たちを相手に赤裸々に語ったのは、特撮を中心とする映画製作という仕事の過去・現在・未来の姿だった。 * * * 樋口 そもそも特撮とは何かといえば、現実では見られない、普通の撮影の仕方では映せないイメージを、映像の中に現実として定着させる手法を指します。そのやり方は時代と共に進化してきましたが、肝心な点は変わっておりません。つまり「スゴいイメージ」を、「スゴい技術」で実現するのが特撮でございます。 特撮の歴史を語る上では避けて通れないアメリカ映画『キング・コング』(1933年)の場合、まず監督のメリアン・C・クーパーが「南の島に巨大な猿がいて、それがニューヨークに連れてこられて大暴れする」というスゴいイメージを出しました。それを実現するために、金属の骨を入れた人形を1コマ1コマ動かしながら、3年くらいかけて撮影しました。 アニメーションというスゴい技術の発明です。その後もジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』(77年)やスティーブン・スピルバーグの『ジュラシック・パーク』(93年)など、実現すべきイメージを目指して、特撮はその都度技術を進化させてきました。 じゃあ、日本の場合はどうか。もちろん海外の優れた技術の模倣も試みますが、どうしても予算やかけられる時間の面で追いつけない。そこで、独自の特撮が進化を遂げることになります。 時は1954年、太平洋戦争が終わって9年目です。東西冷戦のさなか、米・ソふたつの超大国は際限のない核開発競争を進めている。そうした中で、あるイメージが生まれます。核実験の影響で、海底に眠っていた恐竜が目覚めたらどうなるか。それも放射能の影響でケタ違いに狂暴化した姿で、われわれの住む街に襲いかかってきたら......。 このイメージが『ゴジラ』という映画になります。では、撮影方法は? 『キング・コング』のように、1コマ1コマ怪獣の動きを撮る時間的余裕はありませんでした。だったら、一番動かしやすい"人間という素体"に怪獣の形をかぶせて動かせばいい、というアイデアが生まれます。これが今に至るまで連綿と受け継がれている、「着ぐるみ」と呼ばれる技術の始まりです。