西武・渡邉勇太朗 目指す理想像と1冊のノート 「来シーズンは開幕から一軍ローテ―ションで」
まだ余力を残してマウンドを降りた背番号12に、限りない可能性を感じた。 10月4日、CAR3219フィールド(旧:西武第二球場)で行われた巨人とのイースタン・リーグ公式戦。先発した渡邉勇太朗は7回途中4失点、被安打9、奪三振4という内容でマウンドを降りた。球数は118。 「まだいける、という感じがあったんです。それが良かった」と体力面での手ごたえを感じた登板でもあった。ファームでみっちり走りこんできた渡邉。そんな成果が、ここでものを言った。 プロ2年目・20歳の渡邉は目指す投手像がある。「変化球に頼らない(投手になる)ことですね」 この日は、序盤から長短打を集められ失点すると、その後はカットボールに頼りながら切り抜けてしまう自分がいた。「(自分のスタイルでもある)直球でもっと押していきたかった」と直球とほとんど同じ比率でカットボールを多投せざるを得なくなった投球に反省した。 それでも、試合が中盤に差し掛かるとペースを掴んだ渡邉。5回は併殺でピンチを切り抜けると、6回はこの日初の三者凡退。7回もマウンドに上がり先頭打者を見逃し三振に取ったところで、この日の役目を終えた。直球の最速は148キロ。しっかり球速が出ていたことに、渡邉も頷いた。 そんな将来のレオ投を担う彼の寮のロッカーには、1冊のノートがある。 「”内海さんノート”です」と笑みを浮かべる渡邉の持つそのノートには内海哲也の金言があふれていた。普段から技術面のアドバイスを受け、練習ではキャッチボールをする仲の2人。たわいもない話から派生した野球の話で、自分の心に留めておきたい大先輩の言葉を渡邉はノートに書き記している。 そして、中でも印象に残っているのが、内海が話した「これが完封できる術」だ。ノートには「一巡目はこのように、二巡目はこのように・・・」と1ページの約半分にわたってその術が書かれている。 「確かこの話を聞いたのは残留練習の時だったと思います。(ライオンズ)トレーニングセンターの中でスパイクを履き替えながら内海さんと話をしていたら、こんな話をしていただきました。後からノートに書き留めましたね」 渡邉は常に”内海ノート”をロッカーに置きながら、ふとした時にその言葉と向き合う。シーズンも残りわずかだが、モチベーションは高い。 「ゲームメイクをする力はついてきていると思います。もっと直球主体の投球をしていきたいですね」と今の課題を口にしながらも、「来シーズンは開幕から一軍ローテ―ションでまわることができるように。それが一番の目標です」と宣言した。 渡邉がそのマウンドに立つ日は、きっと日に日に近づいているはずだ。ファームでは「今年になって相手打者を抑える術もわかってきたと思います。余裕を持てるようになりました」と話すように精神的にも一回り大きくなった。大先輩の助言も手伝って、一軍で大きく羽ばたく姿を楽しみにしたい。(写真は球団提供) 西武ライオンズ