地球の裏側からやってきた佐賀のハーデン(Bリーグ・佐賀バルーナーズ レイナルド・ガルシア)
「ハハハ!ヒゲを剃るのがあまり好きではなくて、ただ伸ばしてるだけなんだけどね。でも、そう言ってもらえてうれしいよ」 佐賀バルーナーズの司令塔であるレイナルド・ガルシアの見た目とプレースタイルは、NBAブルックリン・ネッツのジェームズ・ハーデンを彷彿させる。 キューバ出身のガルシアはアルゼンチンやメキシコのプロリーグでプレーし、今シーズンで9年目を迎える30歳だ。「日本でプレーする機会を与えてくれたことは、自分にとって素晴らしいチャンスになっている」というガルシアははじめてアメリカ大陸を離れ、新たなキャリアを歩みはじめた。 「日本は文化が異なる国だが、いろんな面で素晴らしいところが多い。人々は落ち着いており、何よりも安全に生活できる環境が整っている。家族と一緒に来る外国籍選手を温かく迎えてくれるパーフェクトな国だよ」 187cm、95kgのポイントガードは平均17.9点を挙げ、好調な佐賀を支えるキープレーヤーだ。さらにフィットをしてきた直近10試合のうち、7試合が20点以上を記録し、2月21日のバンビシャス奈良戦では33点、3月14日の福島ファイヤーボンズ戦ではBリーグでのキャリアハイとなる38点を叩き出した。得点だけではなく、ポイントガードとして「チームメイトの特徴を理解し、それを生かしてプレーすること」を心がけている。玉離れも良く、ポップする仲間へパスを出し、チームの3ポイントシュート成功本数(422本/平均8.6本)は現在B2トップを誇る。 「得点もアシストもディフェンスも大事であり、リバウンドも必要になってくるかもしれない。一つのことだけではなく、自分ができる全てのことをコートで表現し、チームを助けたいんだ」
現代バスケにおける3タイプのカテゴライズ
日本における外国籍選手の多くは、身長差を補うビッグマンを迎える。一方で、今シーズンより外国籍選手を3人保有することができるようになり、少しずつ変化も見られている。202cmの中西良太を獲得したことで、佐賀はガルシアも迎えることができた。世界的に見れば、ガードが得点源となる。スペイン代表のコーチングスタッフでもあるルイス・トーレスヘッドコーチは、「ポイントガードという言葉もなくなりつつある」と持論を述べる。続けて、佐賀の選手を例に挙げながら、3つのタイプにカテゴライズされる現代バスケについて説いた。 「ドリブルを得意とし、ピック&ロールからクリエイトする選手(レイナルド・ガルシア、相馬卓弥、澁田怜音、西裕太郎)」 「ピュアシューター(小松秀平、マルコス・マタ)」 「インサイドからフィニッシュをするタイプの選手(ケニー・ローソン、中西良太)」 ガルシアに対し、マッチアップするのは日本人選手になることが多い。「リングに対するアタックや、パスコースに対して強くマークするディフェンスをしてくる。でも、日本人選手とはフィジカル面で勝っているので、そこに対してより強いプレーをすることが重要だと考えている」というガルシアは長所を生かし、1年目から活躍を見せる。 佐賀には帰化選手がいるわけではない。187cmのガルシアを起用することで、ファウルトラブルなどによってはインサイドが手薄になり得る。だが、トーレスヘッドコーチは「インサイドのウィークポイントも組織としてのチームディフェンスで補っている。レイナルドが外を守ることによって、ゲーム中は多くのことを解決してくれるメリットの方が大きい」と述べ、数多ある攻守のバリエーションを駆使しながら勝利を重ねている。取材したアースフレンズ東京Z戦では、トーレスヘッドコーチが様々な修正点を情熱的に指示し、試合中に成長する選手たちの姿が見られた。 ガルシアを迎えたことは、「アウトサイドの日本人選手たちが世界基準になるためのひとつの機会になる」と保田尭之アシスタントコーチは考える。 「今、レイナルドのことを一人では守り切れていない場合の方が多いです。それに対し、彼を守るためにどんな成長をすべきかを考える必要があります。例えば、体格的に引けを取らない選手をコンバートさせたり、フィジカルを強化したり、課題を見つけるきっかけになると思っています。それがクリアできれば、また新しいタイプの外国籍選手が必要になってくるような状況が生まれます。レイナルドのようなアウトサイドの選手がいることで、将来的に日本代表やBリーグの向上に大きな成果が出てくるはずです」