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「性犯罪被害者 否定しないで」 被害女性 切実に訴え

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長崎新聞

 「魂の殺人」とも言われる性犯罪。被害者は声を上げにくい状況にある。社会の誤解や偏見に基づいた心ない言葉などで被害者が傷つけられる「セカンドレイプ(二次被害)」が背景にある。「女性はいくらでもうそをつけますから」。国会議員の発言が被害者救済を困難にすると問題視されている。被害を受けた長崎県内の女性は、切実に訴える。「どうか被害者を否定しないでほしい。自分は悪くないと信じ、自信を取り戻すことでしか被害者は救われないのだから」 ■密室  昨年5月。県内の40代女性は、車で移動中に事故に遭い、重いむち打ちを負った。全身の慢性的な痛みや倦怠(けんたい)感は病院に行っても一向に良くならず、日増しに心身が弱っていた。  事故から1カ月。友人から整体師の男を紹介された。男とは面識があったため警戒心はなかった。実際に一度施術を受けると、「魔法にかかったみたい」に痛みや倦怠感は和らいだ。「良かったら今後も継続して治療しましょうか」。彼女は、迷わずうなずいた。  施術は1回20分。場所は主に女性の自宅。施術を受けるごとに体は回復した。だが、わいせつ行為とも思える施術方法に違和感を覚えるようになった。  「経過観察に必要なので、服を脱いでください」  何度も、そう要求された。女性が断ろうとすると「治療に必要」「良くなるため」などと押し切られ、裸の写真や動画などを撮られたり、体を触られたりした。「治療をしてもらっている立場なのに、おかしいと思う自分の認識が間違っているのか」。密室の空間で治療を名目にした行為に、女性の感覚はまひしていた。 ■事件化  疑念が確信に変わったのは施術が始まって2カ月後。スマートフォンをチェックしていると、「整骨院利用者が治療者からわいせつ行為を受けた」というニュースが目に飛び込んできた。「自分と同じだ」。警察署に行くと、「間違いなく犯罪。逮捕を希望しますか」と尋ねられた。  悩んだ末に、被害届は出さなかった。事件化されると周囲に迷惑が掛かるし、自分自身が捜査や裁判の心身的負担に耐えられないと判断した。男とは、最後の施術以降は会っていない。  被害のことは家族や数人の知人にだけ打ち明けた。「私が悪かったんだろうか」。それでも周囲は理解してくれると信じていたが、現実は違った。  「自宅に招いたあなたにも責任がある」「世間知らず」。そう言われた。 ■勇気  恥を忍び勇気を出した告白の後には、むなしさだけが残った。そして自らを責めるようになった。精神的ストレスから円形脱毛症や突発性難聴に苦しんだ。今もなお撮影された動画などがネットに流出していないかと不安を抱え、不意に涙が止まらなくなる。不眠が続き、心療内科にも通うようになった。  被害から1年以上がたち、カウンセリングの効果もあって少しずつ前を向けるようになった。被害に遭ったことを受け入れつつ、明るい気持ちを取り戻して生きていきたいと思う。涙をハンカチでぬぐいながら、女性はこう語った。  「性犯罪の被害者になるとは想像もしなかったし、それを認めることに抵抗感もあった。加害者を信頼していたが、治療行為に乗じて性暴力をした事実を決して許せない。被害者の心の回復は、周囲がどう被害者を理解してくれるかによるところが大きい。今後、私と同じような被害者をなくすために、当事者として勇気を持って発信していく」

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