杯を重ね気分は高揚した。「ほろ酔いくらいなら…」。繰り返した急加速、急ブレーキ…赤ら顔は一気に青ざめた「これは〝走る凶器〟だ」。記者が飲酒運転を体験
忘年会シーズンを迎える中、鹿児島県運転免許試験場(姶良市)であった「飲酒運転体験講習」に参加した。「酒を飲んでも普通に操作できるのでは」との考えは大間違い。急加速や急ブレーキを繰り返し、運転後は走ったコースを思い出せなかった。酒を飲むと、車は「走る凶器」になると実感した。 【写真】コースを曲がり切れず、カラーコーンに接触する車=9日、姶良市の県運転免許試験場
飲酒運転による事故が県内でも絶えないことから、県警交通企画課と鹿児島西署が9日に共催した。鹿児島西地区安全運転管理協議会青年部と、報道機関の記者計10人が参加した。 全員で乾杯し、促されるまま、約1時間半で350ミリリットルの缶ビールと缶チューハイを計7本、日本酒とワインを1杯ずつ飲んだ。気分は高揚し、他の参加者から「顔が真っ赤」と言われるほど。呼気中のアルコール量は、酒気帯び運転の基準値0.15ミリグラムを上回る0.5ミリグラムに達していた。 その後、教官を助手席に乗せてハンドルを握った。開始早々、発進時にアクセルを限界まで踏み込んでしまい、教官に「スピードの出し過ぎ」と注意された。一時停止の際は、停止線を約2メートルもオーバーした。 S字カーブとクランク、三角コーンの間をジグザグに通る「スラローム」にも挑戦。大きな失敗はなかったが、急加速と急ブレーキを無意識に繰り返していた。「明らかに散漫。ミラーを一度も見ていないですよ」と指摘を受けた。5分ほどの体験だったが、感想を聞かれて、どこをどう運転したか思い出せない自分にぞっとした。
通勤で毎日車を使うという鹿児島市上之園町、男性会社員(26)も体験。運転前は「ほろ酔い程度なら大丈夫でしょう」と自信満々だったが、講習後は「2回も脱輪した。公道だったらと思うと怖すぎる」と青い顔で話した。 他の参加者の車に同乗すると、縁石に何度も乗り上げたり、三角コーンを倒したり。教官の指示を無視し、コースを間違える人もいた。「酒で運転がここまで変わるとは」と恐怖を感じ、飲酒は事故に直結すると思い知らされた。 県警交通企画課によると、今年は10月までに、飲酒運転に起因する事故は39件あり、8人が亡くなった。鹿児島西署の松田健史交通課長は、11月施行の改正道交法に触れ「車だけでなく自転車も危険。『飲んだら乗るな』を絶対に守って」と訴えた。
南日本新聞 | 鹿児島
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