魚肉ソーセージが進化していた!「体に悪そう…」が一転、人気復活のワケ
お酒のつまみやおやつという印象が強い魚肉ソーセージ。その一方で「添加物が入っていて体に悪そう」というイメージもあるが、昨今ではこうした見方も変わってきている。ピーク時より生産量は減少しているが、実はここにきて復調の兆しを見せているのだ。そこには、時代背景と企業の努力があった。マルハニチロと丸大食品に魚肉ソーセージの今を聞いた。(清談社 沼澤典史) ● 「健康に悪い」イメージ払拭で 高まる魚肉ソーセージの人気 魚肉ハム・ソーセージの生産量は1972年の18万491トンをピークに、年々減少。2023年は4万5815トンと4分の1まで低迷してしまった(日本缶詰びん詰レトルト食品協会の統計より)。 ただ、全国のスーパーなどの販売データを集計した日経POSによれば、1000人あたりの販売金額は、3月時点で前年同月比18%増の2431円と過去5年間で最高を記録。実際、魚肉ソーセージの大手メーカーであるマルハニチロと丸大食品の両担当者も「近年、右肩上がり傾向」という実感を示している。 人気の要因は、魚肉ソーセージの栄養が認知されたことや手頃な価格、そのまま食べるだけではないアレンジ料理の周知などがある。マルハニチロの加工食品ユニットチルド食品事業部すりみ食品課の福田憲滋副部長はこう話す。
「一時期『添加物が入っていて体に悪そう』というイメージがあった魚肉ソーセージですが、まったくそんなことはありません。常温で持ち運べるようにとレトルト殺菌しており、保存料は入っていません。また、魚のすり身ですからたんぱく質も入っていますし、カルシウムも豊富。むしろ健康を手助けするような食品なんです」 マルハニチロでは、さらなる健康志向の商品も開発した。それが2024年2月に発売した「DHA入りリサーラソーセージω」だ。これは特定保健用食品(トクホ)を取得した同社の自信作である。 「こちらはDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が、合わせて1000ミリグラム入っております。これらによって、血管の弾力性を高めたり、血液がサラサラになったりという効果が見込まれます。つまり、心血管疾患になるリスクを低減する可能性があるのです」(福田氏) 福田氏が言う「心血管疾患になるリスクを低減する可能性」は、同商品のパッケージにも記載されているが、トクホの中でも具体的に疾患を載せるのは審査上非常にハードルが高い。マルハニチロの「DHA入りリサーラソーセージω」は、個別審査型で疾患名の表示を初めて国が認めた健康食品なのである。 「消費者庁の消費者委員会で審議をされている専門家の方々に、DHAが体に良いものだとはっきり認めていただいた結果です。安全性や効果などについてのエビデンスも用意し、発売まで足掛け3年ほど消費者庁さんとやりとりを重ねましたね」(福田氏) 2月の発売だが、売り上げは「我々の予想よりだいぶ上を推移している」(福田氏)とのことで、「魚肉ソーセージ=健康食品」という役割がより周知されている。ちなみに、福田氏の部署の社員のほとんどがお昼休憩に魚肉ソーセージを1本食べて、健康維持に努めているそうだ。