東レ、帝人「航空機大不況」でも暗くない理由
新型コロナウイルスの影響を受け、航空業界は2021年も低迷しそうだ。このことが、航空機向けに炭素繊維複合材を提供する東レや帝人にとっても懸念材料になっている。 【グラフ】東レの炭素繊維複合材は東レが牽引 高い技術力や製造ノウハウが必要な炭素繊維は、日本の素材メーカーが世界をリードしている。東レ、帝人が世界1位と2位で、三菱ケミカルも上位に食い込む。特に東レは世界シェア約5割のガリバーだ。 中でも柱の炭素繊維複合材で、東レや帝人の近年の成長を牽引してきたのが航空機向けだ。炭素繊維複合材とは、樹脂(プラスチック)に炭素繊維を混ぜて強度を高めた素材である。
東レは炭素繊維複合材の用途別の売上高を公開しているが、コロナの影響がまだなかった2019年3月期(2018年度)の炭素繊維複合材の売上高2159億円のうち約45%にあたる969億円を、航空機向けが大半の「航空宇宙」用途が占めた。 成長率も非常に高い。東レの「航空宇宙」用途の2014年3月期の売上高は572億円だったので、2019年3月期の売上高はそこから約1.7倍に拡大したことになる。 追い風となってきたのが、脱炭素の流れだ。航空業界では使用燃料を減らしてCO2(二酸化炭素)の排出量を抑えようと、機体の軽量化を進めている。うってつけの素材として採用が増えているのが、この炭素繊維複合材というわけだ。重量は鉄と比べ4分の1だが、強度は10倍に上る。
■航空機の注文キャンセルが相次ぐ だが、コロナで状況は一変した。海外観光や海外出張は自粛だけでなく各国政府の出入国制限もあり、国内外の大手航空会社にとってドル箱である国際線の利用が2020年以降は激減。そのあおりで、航空機メーカーへの航空機の注文キャンセルが相次ぐ。これに伴い、航空機向け炭素繊維複合材の需要も減少している。 東レはアメリカの航空機大手ボーイング向け、帝人は欧州の航空機大手エアバス向けの部材提供をメインとするが、いずれも非常に厳しい状況にある。