鋭い眼光でキングを見つめていた 内村航平に学んだ鹿屋体大初の体操メダリスト【パリ五輪】
名シーンが数多く刻まれたパリ五輪。印象に残る大逆転金メダルは体操男子団体の日本代表だ。最終種目の鉄棒を前に首位中国と2位日本は3・267点差。奇跡の逆転劇の流れをつくったのが、鹿屋体育大(鹿児島県鹿屋市)の体操部初のオリンピアン杉野正尭(25)。鉄棒の1番手としてダイナミックな離れ技で観客を魅了し、中国に重圧をかけた。 ■笑顔、涙、抱擁…早田ひな激動のパリ五輪【写真多数】 体操選手としては大柄な身長170センチの体を生かした技は美しさに加え、ダイナミックさが強みだ。7年前、大学1年生だった杉野が体操界のキングだった内村航平さんに向けていた鋭い眼光を覚えている。杉野は2017年の全日本種目別体操のあん馬で優勝した。3位は内村さんだった。 私は当時東京運動部の記者だった。2016年リオデジャネイロ五輪を現地取材しメイン担当が体操。「内村番」として、リオであの奇跡の個人総合2連覇を見届けた。その流れで体操取材を続け、新たな九州ゆかりの期待の星に注目していた。 当時代表の主力だった内村さんや白井健三さんらのナショナルメンバーの強化合宿に杉野も参加するようになった。メディアへの公開練習で、内村さんの動きを真剣な表情で追う杉野の顔が印象に残っている。世界のトップに立つためにはどういう練習や思考が必要なのか。逃さず全て吸収しようとする姿が忘れられない。あの経験が意識変革につながったのだろう。 あん馬と鉄棒のスペシャリストは、惜しくも逃した東京五輪の代表入りも糧に成長してパリの晴れ舞台をつかんだ。種目別あん馬で6位、鉄棒は7位入賞した。さらに地力をつけ、4年後のロサンゼルス五輪では団体連覇を引っ張り、個人種目でのメダルへとさらなる飛躍を目指すのだろう。期待したい。(大窪正一) 【#OTTOパリ五輪情報】
西日本新聞社