元日本代表監督アルベルト・ザッケローニがボローニャDF冨安健洋を徹底分析「ユヴェントスやミランが獲得に動いても驚かない」
【インタビュー】ザックが「ユヴェントスやミランが獲得に動いても驚かない」と語るワケは?
今回はセリエAでプレーする、冨安健洋の可能性について語りたいと思います。 ご存じの通り、私は大の日本びいき。冨安と面識はありませんが、彼のプレーも格別の親しみを持って見守っています。 その冨安、ファンの最大の関心事は今、「ポジション」にあるのではないでしょうか? セリエA1年目の昨シーズン、冨安は右サイドバックで起用されていました。それは冨安を大切に育てたいボローニャの親心の現れだったと見ています。 1つのミスが致命傷となるセンターバックとは違い、サイドバックにはミスをしてもカバーしてくれるチームメイトが近くにいます。 セリエAの代名詞でもある、したたかなプレーに対して、まずはサイドバックで経験値を上げる。そういった狙いが監督のシニシャ・ミハイロヴィッチにあったと想像します。
センターバック起用では宝の持ち腐れに
そして迎えた今シーズン、冨安は満を持して本職のセンターバックに“コンバート“されました。 しかし年明け2戦目、1月6日の第16節ウディネーゼ戦でしたね。ミハイロヴィッチは冨安を右サイドバックで起用しました。 これには「冨安にセンターバックはまだ厳しかったか?」、「右サイドバックの方が適正?」と考えたファンも多かったのではないでしょうか。 私がまず強調したいのは、センターバック失格の烙印を押されたわけでは決してないということ。 心配ありません、冨安はセンターバックとしての資質をしっかりと備えています。 高さもありますし、危機察知能力も高いです。90分間、集中力が途切れることもありません。 セリエAはこれまで多くの優秀なセンターバックを輩出してきました。それでもミスを恐れ、ペナルティーエリア内で怖じ気づく選手は今も昔も一定数います。 とくに下位チームの選手によく見られる傾向ですが、冨安は違いますね。相手がどんな強豪チームでも、ミスを恐れず、果敢に挑んでいきます。 献身的でもあります。チームのため、そしてチームメイトのため、自己犠牲を払うことに何のためらいもありません。 そして何より素晴らしいのが、彼の自ら率先してプレーする積極性。その姿勢こそが、ミハイロヴィッチに再び右サイドバックでの起用を決断させる大きな要因になったと考えています。 なぜならその最大の魅力が、センターバック起用では宝の持ち腐れになってしまう嫌いがあるからです。 もちろん、プレーするチームにもよるでしょう。センターバックでも、戦術やシステムによっては、攻撃のイニシアチブをとれるチームはあります。 ただ、ボローニャでは現状、そういうプレーは求められていません。 冨安自身もセンターバックだと積極性を存分に発揮できず、少し息苦しく感じていたのではないでしょうか。 繰り返しますが、冨安はセンターバックとして必要なクオリティをすべて高いレベルで有しています。 その素質に加えて、90分間、常にゲームに参加し続け、自ら仕掛けるプレーも繰り出せる。 そんな素質を持った選手を、センターバックだけで起用するのは少しもったいないのでは……。そう考えてしまうのは、私だけでしょうか。 いや、ミハイロヴィッチもきっと私と同じ考えのはず。冨安を右サイドバックに戻したのは、おそらく彼のポテンシャルを最大限に引き出したいという狙いからでしょう。