「103万円の壁」引き上げ表明、幅広い合意形成図り政権運営-石破首相
(ブルームバーグ): 石破茂首相は29日、衆院本会議での所信表明演説で、国民民主党が見直しを求めてきた所得税が課される年収基準「103万円の壁」について、来年度税制改正の中で「議論し引き上げる」と表明した。
今後の政権運営に関し、衆院での与党過半数割れを踏まえ、自民、公明両党の連立を基盤に他党にも意見を聞き、「可能な限り幅広い合意形成」を図ると強調した。国民が主張する暫定税率の廃止を含むガソリン減税についても「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」と語った。
自民・公明両党は経済対策の策定と補正予算の編成について国民と政策協議を重ねてきた。「壁」の見直しとガソリン減税への取り組みは経済対策にも盛り込んでいるが、首相自らが国会演説で明言することで同党に配慮する姿勢を改めて示す形となった。経済対策に関し、首相は「党派を超えて優れた方策を取り入れる」ため、最大限の工夫をしたとも言及した。
国民の玉木雄一郎代表は記者団に対し、「103万円の壁」引き上げを石破首相が明言したことについて、「第一歩が記された」と評価した。ただ、「どこまで引き上げるかはまさにこれからだ」とも指摘し、今後の政策協議で詳細を詰める考えを示した。
経済あっての財政
演説で石破首相は「経済あっての財政」との考えを重ねて表明し、財政状況の改善を進めて「危機に強靭(きょうじん)な経済・財政」を作ると語った。「日本全体の活力を取り戻す」ために、地方創生、「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への移行、全世代型社会保障の構築の三つの取り組みを進めるとしている。
脱炭素の取り組み「GX(グリーントランスフォーメーション)」による産業構造や立地の将来像については、2040年に向けたビジョンを年内に示し、核となる拠点を広げるとした。政府は20兆円規模の先行投資支援により、官民で150兆円を超えるGX投資実現を目指している。