「生命保険も医療保険も不要」そう断言するお金のプロが入っている3つの保険
老後に向けてどう備えればいいのか。経済コラムニストの大江英樹氏は「まっさきに見直すべきは保険だ。保険への支払いより、手元に現金を残すことを優先したほうがいい。私が入っている保険は3つしかない」という――。(第2回/全2回) 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、『定年前、しなくていい5つのこと 「定年の常識」にダマされるな! 』(光文社新書)の一部を再編集したものです。 ■老後に必要なのは「保険」ではなくて「現金」 さて、ここまで投資や資産運用についてお話ししてきましたが、定年後のお金について考えた場合、増やすこと以上に大切なことは「無駄を無くす」ということです。 ただし、この「無駄を無くす」ということ、「節約をしなさい」という意味ではありません。節約という言葉には、必要な物でも我慢するという響きがあります。でも定年が近づいた人、定年を迎えた人にとっては、やっとこれからやりたいことができるようになったのです。 趣味や旅行、外食といった楽しみも節約のためにあまりしないということであれば、いったい何のために今まで働いてきたのでしょう。そういう人生を楽しむためのお金はあまりケチる必要はないのです。それよりも、知らないうちに支出してしまっている「無駄」を無くすべきです。 ではいったいどういうものが無駄なのでしょうか? ちょっと身の回りで考えてみましょう。ほとんど行っていないスポーツジムや会員制クラブの会費、現役時代の習慣でなんとなくとり続けている新聞や雑誌、契約した時についているスマホのオプションプラン等々、案外気が付かないところでこうしたあまり意味の無い支出があるはずです。 これらをちょっと見直すだけで最低でも月に1~3万円くらいの無駄を省くことができます。
■生命保険をやめるだけで800万円も貯蓄できる さらに大きいのが保険です。 たとえば生命保険を考えてみましょう。そもそも生命保険の役割は、保険を掛けている本人が亡くなった場合、残された家族が生活に困らないようにすることです。 60歳時点でもまだ小さい子どもや高校生ぐらいまでのお子さんがいればそれも必要でしょうが、すでにお子さんが独立していたとしたら生命保険はほぼ不要です。仮に奥さんと年が離れていたとしても遺族年金という制度がありますから、一定の生活保障はあります。 ただし、不動産を中心とした巨額の資産を持っている場合の相続対策として生命保険が有効な場合はあります。でも、ほとんどの人にとっては60歳以降の生命保険は不要だと思います。 ところが、実際には年配の人でも割とたくさん生命保険には入っているようです。公益財団法人 生命保険文化センターというところが調べて平成30年12月に出した「生命保険に関する全国実態調査」(*1)によれば、「世帯年間払込保険料」(生命保険)は、60~64歳で年間43.9万円、65~69歳では年間33.8万円となっています。 仮に年間40万円払っている保険料を止めてそれを貯蓄に回せばどうなるでしょう。10年間で400万円、20年間であれば800万円の蓄えができます。老後に2000万円必要という話がありましたが、保険を止めるだけでその4割はカバーできてしまうのです。 (*1)平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」(公益財団法人 生命保険文化センター) ■医療保険は本当に必要なのか さらに医療保険を考えてみましょう。生命保険はやめても医療保険に入っている人は結構多いと思います。でもよく考えてみてください。 医療保険というのは医療費をまかなうためのものではないのです。医療費をまかなうのは、公的医療保険である「健康保険」です。日本は国民皆保険ですから、サラリーマンも自営業者も定年退職者も、必ずいずれかの健康保険に入ることが義務付けられています。医療費はこの健康保険から出てくるのです。 仮に自己負担が高額になったとしても「高額療養費制度」があるため、もし月に100万円の治療費がかかったとしても自己負担は9万円程度で済みます。70歳以上になれば多くの人は5万7600円だけの自己負担で済むのです。 では民間の医療保険はいったい何のためにあるのかといえば、こうした公的な医療保険ではカバーできない部分、たとえば入院したときの食費や個室で入院する場合の差額ベッド料、そして病院にタクシーで通う場合の交通費といったことをカバーするのがその役割です。 だとすれば、別に医療保険に入らなくても、一定の貯蓄があればそこから出せばよいのです。 仮に毎月3千円の医療保険に入っていたとして、20年間払い込み続けると、その金額は72万円になります。もし5日間入院したとして仮に1日1万円の入院給付が出たとしても、5万円です。 それなら保険料を払う代わりにその72万円を貯蓄しておき、そこから払えばよい話です。