【時視各角】政権を滅ぼした尹大統領の3重中毒
昨日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の談話は「確信犯」の面貌をはっきりと表した。内容自体は就任後にした談話の中で最も明瞭だった。巨大野党の横暴を激しく非難する部分は同意する国民もかなりいるだろう。ただ、それでも突然の非常戒厳で急発進した過程は全く合理的に納得できない。 国会に兵力を送ったことについて尹大統領は「国会をまひさせようとしたのではなく、巨大野党の亡国的形態を象徴的に知らせるため」と釈明した。軍の投入が子どものいたずらなのか。韓国社会で軍の政治介入に対する国民的な拒否感は考えもしなかったのだろうか。尹大統領の精神世界がなぜこのようになったのだろうか。今回の事態は彼の3つの中毒のために発生したようだ。 1つ目は権力中毒だ。尹大統領は検事時代、一度狙った標的はどうにかして拘束することで有名だった。大物を次々と捕まえて、彼は自身の検事権力に対する強い確信ができたのだろう。自分がその気になれば制圧できない対象はないという確信だ。 脳神経学者イアン・ロバートソンによると、権力感はドーパミン(幸福感を与える神経伝達物質)分泌を促進し、脳の中毒中枢を活性化するという。ロバートソンは「権力はコカインのような作用をする。他の人に共感せず、傲慢にさせる。権力は視野を狭める」(『勝者の脳』)で指摘した。 権力に中毒になった尹大統領は自身がすべてのことを統制できるという錯覚に陥った。それで討論もなくむやみに青瓦台(チョンワデ、旧大統領府)を移転し、厄介な与党代表を追い出し、対策もなく医学部の定員を2000人も増やした。ところが4月の総選挙惨敗後、巨大野党が次々と自身の権力行使を妨害すると、怒りが積もって爆発する状況に至ったようだ。権力中毒者に対話と妥協は頭の中にない概念だ。尹大統領は非常戒厳宣言を拘束令状請求レベルで認識したのだろう。軍兵力を動員して「犯罪者」が率いる野党を制圧するという発想は、権力中毒の終着点だった。 2つ目はユーチューブ中毒だ。尹大統領は新聞・放送よりもユーチューブに心酔した。尹大統領が側近に自ら特定のユーチューブチャンネルを推薦したという話も聞こえる。登録者数を増やそうとするユーチューブは客観的でバランスが取れた視点を提供しない。最初から制限的な視聴層を対象に制作するため、刺激・偏向的であり、検証されていない不良コンテンツが乱舞する。 尹大統領が好んで見るといういくつかの右派チャンネルはストレス解消用としてはよかったのだろう。毎日の新聞・放送は国政運営の問題点を一つ一つ問いただすが、ユーチューブではこれらすべてが自由民主主義秩序を脅かす従北・反国家勢力の陰謀のためだとすっきりと整理してくれるので、どれほど聞き心地がよいだろうか。 ユーチューブ中毒になれば、陰謀説が支配する妄想の世界に陥る。今回の戒厳宣言の直後、戒厳軍が選管委に進入してサーバーの確保に動いたのは、尹大統領が「不正選挙陰謀説」をどれほど信奉していたかを見せる。彼は昨日の談話でも選管委に対する強い疑心を冗長に表出した。彼が2022年に金振杓(キム・ジンピョ)国会議長と会った際、梨泰院(イテウォン)惨事について「特定勢力に操作された事件である可能性も排除できない」と話した。尹大統領はユーチューブをあまりにも多く見た。 3つ目はアルコール中毒だ。尹大統領は数十年間にわたり暴飲してきた。酒は脳の前頭葉を衰えさせる。前頭葉は衝動を抑制し、理性的な判断を担当する部位だ。酒のために前頭葉の機能が低下すれば感情を調節できず、すぐに興奮して激怒する。症状が激しくなれば酒を飲んでいない状態でもそのようになる。 尹大統領はあらかじめアルコール中毒の相談を受けるべきだった。そうしていれば戒厳宣言のような悲劇的な事態はなかっただろう。酒による判断力の低下が自身の人生と政権を破滅に向かわせた。これを書いてはっとする。新年からは酒を減らさなければいけないようだ。 キム・ジョンハ/論説委員