「マンハント」大阪ロケ撮影秘話<中> 上本町駅で電車逆走・ハルカス空撮
旧生駒トンネルで撮影、安全のためのサポートも
この映画では主役が逃げるシーンも見どころのひとつ。そこで、福原さんはウー監督に、生駒山を貫いて大阪府東大阪市と奈良県生駒市を結ぶ1914年開通の「旧生駒トンネル」をロケ地候補として案内した。 全長3388メートルあるこのトンネルは、並行している「新生駒トンネル」が完成してからは閉じているものだ。福原さんは「ウー監督だから連れて行きました。もちろん使っていないところなので、扉を開けたら瓦礫の山でした。『中を見たい』ということで作業員にお願いしてきれいにしてもらい、再び(ウー監督に)見てもらってロケ地に決まりました」と振り返る。 旧生駒トンネルでは4日間にわたって撮影が行われた。しかし、暗いトンネルで電気も通っていないため、ガソリンを使った投光器が使われたトンネル内は排気ガスで空気が悪く、測定器を使って安全を確保。空気をよくするため、トンネル担当の作業員が約3キロ先の入り口の扉をあけて換気をするなど、懸命なサポートを行った。
近鉄の社員や家族もロケに協力「緊急時の対応も視野」
また、圧巻だったのがトンネルへ逃げ込むきっかけとなるシーン。逃走中の主役が近鉄・上本町駅構内の階段を急いで降りて電車に乗ろうとするも間に合わず、そのまま電車の前に飛び降りてトンネルの中を逃げるというものだ。 その階段から電車の前に逃げる過程で、ウー監督はどうしても普段の進行方向と反対に電車を走らせてほしいと要求してきた。 「僕はたいていのことは笑顔で『やってみましょう』と答えました。しかし、この時だけは。だって電車の逆走というのは一歩間違えば危険ですし、普通はできないことですからね」 福原さんは運転士だった過去もあり、もちろん撮影は営業時間外に行うものの、逆走することが信号機もなく、いかに安全面に問題があるかということはわかっている。この件についてはほかの鉄道会社にも相談したが、いずれも受け入れるという返事はなかった。そこで、近鉄で受けることとなり、関係各所に十分な説明をした上で了解をとり、いよいよ撮影本番を迎えた。 撮影は最終列車運行後から始発までの間で、3日かけて行われた。エキストラには、近鉄の社員やその家族も参加。しかし、ここでも狙いがあった。「こういう撮影なので、もし信号機などのトラブルがあったら、そこに来ている社員が対応してくれるという利点もありまして。万全の態勢で臨みました」と福原さんは語った。