“職業系ドラマ”はどこまでリアル? 視聴者の厳しい目線に制作側も必死
ドラマと原作の時代のギャップの穴埋めも
古くからドラマの題材になることが多い刑事や医者、弁護士なども、時代とともに作中でのリアリティーがより追及されるようになっているという。 「例えば、ひと昔前にはドラマで医者が患者の脈を診るときに手首に“親指”を当てるというシーンを目にすることもありました。しかしこれは間違いで、実際には“人差し指”と“中指”、“薬指”と3本の指を手首に当てるのが正しいのですが、細部までのこだわりはさして重要視されていなかった。しかし今では、視聴者の目も厳しくなっており、そういった細かい点もリアルさを求められる時代です。また、警察の“組織編成”が変わることもあるし、犯罪も“ネット”絡みを含め複雑かつ巧妙になっている。医学はどんどん進歩しているし、“犯罪心理学”といった犯人や主人公の心の内面を描く作品も流行っています。法改正によって、“時効”が消失したり、“裁判員裁判”が導入されるなど、原作の時代とは状況がまったく異なるケースもある。だからこそ、時代に即したリアルをドラマに反映させる監修者や指導者の役割は大きい」(前出・市川氏)
昔に比べると厳しい視聴者の目
実際、昨年放送されたNHKの大河ドラマ「花燃ゆ」では、幕末の書物の表紙に、パソコンの明朝体フォントが使われていることを日本語学者がTwitterで指摘し、物議を醸すこともあった。 「おかしな演出は専門家が見ればすぐに違和感を覚えるだろうし、今や視聴者も小道具などの細部にまで目を光らせて、間違い探しをしてはネットで世間に拡散させる御時世ですからね。こうした“監視社会”に対応するためにも、監修や指導のチェックはドラマ作りには欠かせません」(前出・ドラマスタッフ) かつては時代劇を見ながら「こんなに人を斬りまくったら刀の刃がボロボロになるだろ!」とか、トレンディドラマを見ながら、「普通のサラリーマンやOLがこんな良い部屋に住めるわけがない!」など、視聴者が笑いながらテレビにツッコミを入れていた牧歌的な時代もあったが、今はそうもいかないようだ。 とくに職業ドラマに関しては、たとえフィクションといえども、厳しい視聴者の目も納得させられるような細部にまでわたるリアリティーの追及が必要不可欠のようだ。 最近は全般的に視聴率で苦戦を強いられている日本のドラマだが、リアリティーを追究しつつ、視聴者をとりこにする面白い作品の登場を期待したいところである。 (文責/JAPAN芸能カルチャー研究所)