育児休業給付が「実質10割」に!2025年からもらえる子育ての新支援金とは?【専門家が解説】
2025年4月から子育て支援が大幅拡充する。育休中の「実質10割」給付や時短勤務への新制度、多子世帯の教育費無償化など注目の施策が続々と予定されている。どんな条件で受けられるのか?負担増は本当に「ゼロ」なのか?気になるポイントをお金のプロが分かりやすく解説する。(社会保険労務士 井戸美枝) 【「子育て支援の拡充・制度改正」の一覧はこちら】 ● 2025年4月からさらに拡充! 「子育て支援」でもらえるお金 今回は、子育て支援にまつわる「もらえるお金」をご紹介します。 2030年代には若年世代が急減することが予想されており、少子化の流れを止まらせる最後の機会として、政府は「こども未来戦略」を2023年12月に閣議決定しました。その後、予算総額3.6兆円の「こども・子育て支援加速化プラン」が策定され、それらの施策が実行されつつあります。 下表に子育て支援の拡充・制度改正のポイントをまとめました。 今回はこれらの支援の中から、やや制度が複雑である「育児休業給付・出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」をピックアップします。どういった状況で申請できるか、そして給付はいくらかなのか、簡単にご紹介します。 また、これらに係る財源のうち、1兆円程度は「子ども・子育て支援金制度」として、26年から健康保険料に上乗せして徴収されることになります。「実質負担は生じない」という国会の答弁が話題になりましたが、本当にそうなのでしょうか。働き方や年収ごとに、負担する支援金の見込み額もご紹介します。
● 2025年4月に開始する 育児休業給付「実質10割」とはどういうこと? まずは、25年4月に開始する育児休業給付と出生後休業支援給付を見てみましょう。 育児休業給付は文字通り、雇用保険に加入している会社員が育児休業すると、その間に受け取れる給付です。24年10月現在では、休業開始から通算180日までは休業前の賃金の「67%」、180日経過後は「50%」となっています。 それが、25年4月の新制度以降は、育児休業を取得している本人とその配偶者の両方が「14日以上の育休」を取得すると、最大28日間、出生後休業支援給付金が支給されるようになります(※)。夫婦ともに育休を取得すれば、最大28日間給付が上乗せされるということですね。 出生後休業支援給付の給付額は、休業前の賃金の「13%相当額」とされており、現行の育児休業給「67%」と合わせると、給付率は80%となります。 これらの給付は非課税で、育休中は社会保険料が原則免除されます。休業前は税や社会保険料が2割程度徴収されているとすると、「手取り」とほぼ同額が受け取れる計算になります。これで「実質10割」ということですね。 なお、配偶者が専業主婦・夫である場合や、ひとり親の世帯には、配偶者の育児休業の取得がなくても、出生後休業支援給付金が支給される仕組みとなっています。 男性の育児休業の取得率はまだ低く、女性が出産をためらう原因の一つという指摘もあります。最大28日間とはいえ、両親が育児休業を取得しやすい環境を整えることがこの制度の目的といえそうです。 育児休業給付の申請は、勤め先の企業が行います。育児休業の予定があることを総務・人事部などの管轄部署に伝えると、「育児休業給付受給資格確認票」「育児休業給付金支給申請書」といった必要書類を渡されますので、それらに必要事項を記入して会社に提出します。 (※)男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に休業する必要があります。