パンデミック禍で信頼を築くためにリーダーができること
6. 思いやり(Caring):意識的に関係を構築する
Barry-Wehmiller社のCEOであるボブ・チャップマン氏がザック氏に語ったように、思いやりの文化とは、「リーダーがメンバーを大切に扱い、肉体的にも精神的にも健康な状態で仕事を終えることができるようにするという誠実に心に誓っている」文化のことである。また、思いやりのある文化は、職場で社会的関係を築くことを奨励している。子どもや犬のそばにいることでオキシトシンの生産は刺激される(自宅からのズーム会議を利用することの1つのメリット)。 リーダーが博愛的で、人々の幸せを深く気にかけているときには、信頼が高まる。 - 7. 投資(Invest):全人的な成長を促す 人類の繁栄のためには、個人の成長が重要である。信頼の高い組織では、全人的な成長を促進している。これらの組織は、「メンバーが成長することが彼らの究極の目標であり、仕事は個人の成長に刺激を与える一つの方法である」とザック氏は指摘している。 リーダーがメンバーの全人的な成長に投資すると、信頼が高まる。
8. 自然体(Natural):ありのままの自分をさらす
「リーダーが正直で弱みを見せているとき、組織は自然な状態である 」とザック氏は述べている。自然体で安心できるリーダーは、助けを求め、意見を募り、肯定的な結果も否定的な結果も受け入れる。弱みを見せられるということは、見ている人のオキシトシンを放出させ、その人を助けたいと思わせる。自然体のリーダーは、自身の不完全さをあらわにできる。彼らは親しみやすく、オープンで気配りができ、また、思いやりがあり、親切で、他者に興味がある。注意すべき点は、リーダーの有能さが認められているときだけに限り、弱みを見せることが有効であることだ。有能と思われていないリーダーにとって、弱みを見せることは信頼を損なうことにつながる。 信頼は、有能なリーダーが自分の限界をオープンにしているときに育まれる。
9つ目の鍵はパーパス
オキシトシン分泌を増やす9つ目の方法は、超越的なパーパスに取り組むことである。それは、強いモチベーションを必要とする。人間性を向上させるための要因を伝えたり、それに関与したりすることで、オキシトシンの放出を促し、人を助けたい、人に貢献したいという気持ちが湧き上がってくる。 リーダーが超越的なパーパスに従事しているとき、信頼は高まる。 ザック氏は、ハーバードビジネスレビュー(HBR)の記事で報告された米国の組織の信頼度に関するチームの研究をまとめている。 「企業が8つの行動をどの程度実践しているかについて従業員を対象にした調査を行うことで、各組織の信頼度を測ることができた。(回答者を刺激しないようにするため、調査では「信頼」という言葉は使わなかった)組織の信頼度の米国平均は70%(100%の可能性がある中で)であった。回答者の47%は組織で働いている人達である。」 「信頼度が平均を下回った企業もあり、1社は15%という驚異的な低評価である。全体では、優れた業績の評価と情報の共有(それぞれ67%と68%)が最も低いスコアとなっている。このデータは、米国の平均的な企業が、他の6つの分野では改善しなかったとしても、この2つの分野を改善することで信頼を高めることができることを示唆している。」 「私のチームは、信頼性の高い企業(上位4分の1)で働いている人は、仕事を60%以上楽しんでおり、会社の目的に70%以上一致しており、同僚との距離を66%近く感じていたことを発見した。また、信頼性の高い企業文化は、従業員同士の接し方や自分自身の接し方を改善させる。信頼性の低い組織の従業員と比較して、信頼性の高い企業の従業員は、同僚への共感度が11%高く、非人格化する頻度が41%減り、仕事での燃え尽き症候群の経験が40%減った。また、達成感も41%増加している。」