「小学校で友達に古墳の話をしたら引かれた」過去も “古墳”愛が高じてガイドブックも自費出版した中2男子の素顔とは
ところが当時、通っていた小学校で古墳の話をしたら、友だちが引いていった。古墳好きをからかわれ、嫌がらせもされた。先生から「古墳を見に行く時間があるなら勉強をしなさい」と怒られたこともあった。 ■両親は子どもの「好きなこと」を応援 しかし、両親は郁仁さんの「好きなこと」を応援した。山歩きはイノシシやヘビが出ることもあり、子ども一人では危ないので古墳めぐりについていく。博物館や自治体の催しがあれば一緒に参加する。手書きで「古墳新聞」を作ったり、博物館のイベントでスライド資料を使ったプレゼンテーションをしたりしてきたが、両親は発信の機会を応援してきた。 郁仁さんは「古墳新聞」を土台にして、小学校5年から岡山県の古墳を100カ所選んで紹介するガイドブックの制作を手がけた。中学1年のとき『岡山100名墳』を自費出版した。豊富な写真とともに、それぞれの古墳の特徴や魅力を現地での足を使った調査と基礎データで説明し、美しさやレア度、到達難度やおすすめ度のレートを五つの星で示している。 ■古墳の研究には最新の物理の技術も必要 古墳への探究を続けるうえで、力になったのは大人との交流だ。地元の博物館の学芸員や、地元・山陽新聞の子ども記者としてインタビューをした考古学の研究者、発掘イベントで出会った専門家らが、郁仁さんと対等に話をし、質問に答えてくれた。 「古墳に興味があるなら、社会だけではなく、理科をはじめ学校の教科をしっかり勉強するのが大事」 考古学の先生はこうアドバイスをした。地元の岡山大学では、全国第4位の規模の前方後円墳である造山(つくりやま)古墳で、素粒子ミューオンを用いて内部構造を調べ、未確認の石室を発見する試みを続けている。 「古墳の研究には、最新の物理の科学技術も必要です。すべての教科が自分の可能性を広げてくれると思っています」(郁仁さん) 考古学者を夢みて、休みの日は勉強に取り組む。「少し休んだら」と母親がすすめても深夜すぎまで机に向かう。吹奏楽部でトロンボーンを吹き、生徒会では広報を担当する。活動の原点は古墳との関わりだ。