通信インフラの「当たり前」を支えるドコモ通信網の司令塔、AIとSNSで異常を察知 能登地震で見えた次なる備え
スマートフォンの画面をタップするたび、私たちは意識することなく通信インフラを使っている。料金支払いやチケット予約、行政手続きまで、通信はすでにライフラインの一つだ。その「当たり前」を支えているのが、24時間365日のネットワーク監視体制である。 【写真で見る】NTTドコモの携帯電話網の中核、ネットワークオペレーションセンター ■AIが支える24時間監視 NTTドコモのネットワークオペレーションセンター。東京・品川と大阪の2拠点で、全国の通信設備を監視している。監視対象は約120万台。基地局から通信制御装置、インターネット接続サービス「spモード」のサーバーまで、あらゆる通信設備が対象だ。
「全国で約2000名体制を敷いています」と、サービスオペレーション部長の小川将海氏は説明する。内訳は監視センターに550名、現地保守に1200名、バックヤードに480名。3つの部隊が連携してネットワークの安定運用を担う。 従来の監視は、装置から送られる異常アラートが基本だった。しかし、ネットワークの複雑化に伴い、単純な機器の故障以外の異常も増えている。そこでドコモは2020年からAIを活用した監視を本格導入。通信量やログデータの学習を通じて、異常の予兆を検知し、故障が起きる前の予防的な対処を可能にした。
「AIの活用をさらに進め、より複雑な障害ケースにも対応できるよう取り組んでいます」と、サービスマネジメント部オペレーションシステム担当部長の鈴木啓介氏は説明する。AI技術の導入により、異常の早期発見や予兆検知が可能になっただけでなく、生成AIを活用することで、経験の浅い作業者でも過去の対処実績やノウハウを参照しながら、確実な復旧作業が行えるようになった。 監視の目は通信設備だけでなく、SNSにも向けられている。オペレーションセンターの大画面には、X(旧Twitter)での「ドコモ つながらない」といった投稿がリアルタイムで表示される。同業他社に関する投稿やAWS(アマゾンのクラウドサービス)の状況も監視対象だ。日中は45名ほどのオペレーターが、これらの情報とトラフィックのデータを組み合わせて分析。装置からの異常アラートがなくても、SNSでの投稿急増とトラフィックの異常を総合的に判断することで、サイレント障害の早期発見につなげている。