「インスタで活動紹介をはじめて…」“部員9人”だった大阪の公立進学校が「秋大会ベスト16」で21世紀枠候補に…甲子園出場21回“古豪”の現在地
「勉強は継続してやれる。だから野球でもできるはず」
最も痛感しているのは近年の子どもに薄れがちな“根気”だ。 「長い時間、同じメニューを続けると集中力が切れがちなので、細かく練習を分けながらやらないと続けられない。ですので、メニューを小分けしながら練習しています。 継続して同じことをすることが苦手でも、続けることは大事。飽きさせないように、こちらも工夫しながら指導しています。でも……この子らは勉強は継続してやれるんですよね。だから野球でもできるはず。話を聞く力も持っているので、そのあたりを持って指導していけたらと思っています」 大学でも野球に携わりたいという目標を持っている部員は多く「特にアマチュア野球界の指導に携わる人材育成ができたらと思っています」と指揮官は密かに願っている。
SNSを活用した「部活動紹介」も
今春、久しぶりに2桁の部員が入部したのは、今年から始めたSNSを活用した部活動の紹介で興味を持った中学生が増えたのかもしれないと指揮官は言う。 「今年からインスタグラムで活動を紹介するようになった影響はあると思います。でも、(野口監督就任前の08年から11年まで監督を務めた)青木(一規)部長が中学校訪問などもしてくださったので、それも大きいのかなと。SNSだけに(頼る)というのも少し違いますからね」と野口監督。大きな危機を乗り越えた今秋、チームは府大会ベスト16まで勝ち進み、大阪府の21世紀枠候補に選出された。 府大会4回戦では一昨秋の近畿大会に出場している箕面学園を9-4で破った。先制されるもすぐに追いつき、中盤以降は主導権を握ることができたと指揮官は頷く。 「その時期は雨で試合が中止になって日程が延びたんですけれど、その分準備期間が増えたことと、徹底してきたことをしっかりやり切れたのが良かったです。 今のチームは、力はないですけれど守りからリズムを作って執念を持つというか、みんなで一生懸命、全力でやろうという粘り強さは持っていると思います。それは3年生が作ってくれたもの。2年生がそれを受け継いでくれているんです」 大正、昭和、平成と3元号で聖地を踏んだ“府立の雄”。前回の甲子園出場から来春でちょうど30年となり、周囲の期待も膨らむ。 「(府の21世紀枠候補に)選ばれたことで、生徒らにはやらないと、という意識が芽生えているようには感じます。そこからさらに自信が生まれているような気もします。これも今の3人の2年生、そして6人いた3年生が作ってくれた雰囲気のお陰です」 少ない部員が築き上げた新たな伝統が、何よりの強みになった秋。新時代を生き抜くためのノウハウも手に、その時を待つ。3本線の誇りと共に。
(「甲子園の風」沢井史 = 文)
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