「インスタで活動紹介をはじめて…」“部員9人”だった大阪の公立進学校が「秋大会ベスト16」で21世紀枠候補に…甲子園出場21回“古豪”の現在地
一時は全部員が9人だけという時も…
昨年末、別媒体の取材で市岡高校を訪れる機会があった。グラウンドに到着すると、ノックを受ける選手たちの元気な声がこだましていたが、軽快に動き回る選手の数を数えていると、あっという間に数え終わった記憶がある。 「今は部員数は10人なんです」 野口監督がどこか申し訳なさそうな表情を浮かべ、こう説明してくれた。ただ、もっと言うと、秋に新チームがスタートした直後は9人しかいなかった。その後、1年生が1人入部し一時は10人となったが、また1人減って9人に。ギリギリの人数で運営していくとなると、様々な“限界”がチームについて回った。 「確かに大変なことはありました。でも、去年は人数が少ないなりに野球は楽しくできたんです。野球ってこんなに面白いものなのかと」 そう思わせてくれたのは、その9人の選手たちだったのだと指揮官は振り返る。今夏まで主将を務めた正捕手の谷昊輝を中心にチームのモットーである全力疾走、全力プレーを掲げ、練習から大きな声を出してナインを鼓舞。練習メニューを自分たちで考え、人数の少なさを感じさせないチームの活気を部員たちなりに考えながら作ってくれたのだ。 夏の府大会は、3回戦で決勝まで勝ち進んだ東海大大阪仰星に1-9で敗れ、3年生が現役を引退したが、残った2年生たちがその思いを受け継いでくれたのだ。 「6人の3年生が純粋に一生懸命にやってくれる子たちだったので、それを見てきた今の2年生が3人、今のチームに残っていて、その活気をもって今もやってくれていることが大きいです」 3年生が引退すれば、残った3人の部員と秋はどこかの学校と連合チームを組むことになるかもしれないという危機が迫る中、この春は13人の1年生が入部。現在は2学年で16人という人数で工夫を重ねながら練習を積んでいる。 少子化、スポーツの多様化など要因は様々だが、野口監督は極端に減っていく新入部員の人数をこう分析していた。 「入ってくる部員の層が変わった気はします。昔みたいに野球をやっていたから高校でも、というガツガツした子は減りました。硬式野球部に入部しても軟式へ行ってしまう子もいますからね」 市岡高校は大阪大など難関大へ進む生徒もいる進学校ということもあり、勉強と野球を両立する上で何を目指していくかを明確にしなければならない。さらに、限られた練習スペース、7限の授業後から数時間という練習時間。その中でいかに効率良く力をつけられるか。指揮官も彼らの練習意欲を掻き立てるためにありとあらゆる策を講じてきた。 「特別なことはしていません。ただ、8年前に監督に就任した頃と比べると、考え方というか指導方針は少しずつ変わってはきていると思います。もっと前ならこちらがガツガツと引き上げにかかっていましたけれど、今は歩み寄りながら彼らに考える時間を与えたりしながらメニューの中にドリルを作ることもあります」
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