【福島処理水】非常識は中国だけではない あきれるくらい福島への偏見と差別に満ちあふれたフランスの「ヤバすぎる風刺画」
中国、韓国の猛反発ばかりが報じられるが?
8月24日の放出から約2週間。福島第一原発の処理水について、国内世論は概ね“放出容認”に傾くが、海外からの見え方われわれ々が考えるほど好意的なものではない。中国、韓国の猛反発ばかりが報じられるが、フランスの報道機関の風刺画を見てみると、ジョークでは通らないほどひどい内容で――。 【写真を見る】足が3本!? フランスの雑誌が掲載した許しがたい風刺画 ***
まずは有名な風刺週刊紙「シャルリー・エブド」に掲載されたもの。そこにはこう書いてある。 「フクシマの放射能水はどこに捨てるべきか?」 「セーヌ川がもっときれいになれば」 オリンピック開催を来年に控えて、なお汚いセーヌ川を批判するのが主旨とはいえ、引き合いに福島を持ち出すのは見当違いと言うしかないだろう。
「放射能で魚が光る」
ある有名イラストレーターの“作品”もヒドい。 「フクシマの水、海に放出」 というタイトルを掲げて、光る魚を見つけた釣り人が、 「静かに! 魚が来るぞ」 と話すシーンを描く。 放射能で魚が光るというのは、かつて時計文字盤の夜光塗料にトリチウムが使われていたことに由来するのだろうが、日本人からすればちっとも笑えない。
放射能=奇形の“迷信”
そしてフランスのテレビ情報誌「テレラマ」に掲載されたものにいたっては、さらに非科学的で、内容もエゲツない。 「フクシマの汚染水、海洋放出へ」 というキャプションを添えて描かれた、楽しそうな海水浴シーンを注意深く見ると、奥には原発の建屋があって、脱いだ服は防護服。 そして右側の男性の足が……なんと3本! 処理水で奇形が生まれるようなデマが、いまだに垂れ流されているのだ。 こうなるとフランス人自慢の「エスプリ」も「ユーモア」もあったものじゃなく、単なる悪趣味な誹謗中傷である。
トリチウムの排出量はフランスの方が多い
実際には、福島の処理水125万トンに含まれるトリチウムが860兆ベクレルであるのに対し、フランスの再処理施設が年間に排出するのは実に1京(=1兆の1万倍)ベクレルという規模。 この数字からも、少なくとも処理水の安全性について“風刺”されるいわれはないはずなのだが…。 原子力の先進国で、原発に理解があるはずのフランスでも平気でこんな報道がなされることに目まいを起こしそうになるが、批判の矛先は日本の「広報文化外交(パブリック・ディプロマシー)」の至らなさにも向けられてしかるべきなのかもしれない。 「週刊新潮」2023年9月14日号 掲載
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