【全文紹介】「歌会始の儀」皇室の方々の歌 ~お題は「窓」 天皇皇后両陛下と皇族方の歌
日テレNEWS
皇居で新年恒例の「歌会始の儀」が行われました。今年のお題は「窓」です。 共通の題で歌を詠む歌会は、奈良時代には始まっていたとされ、鎌倉時代には行われていた「歌御会始」に一般の応募が認められたのは明治7年。皇室と国民を結ぶ長い歴史を持つ行事です。 「年の初めに~」という古式ゆかしい節回しで、伝統のままに歌が披露されました。天皇皇后両陛下と皇族方の歌を紹介します。(歌の背景については、宮内庁の説明をもとに編修しました) 【天皇陛下:御製】 「世界との往き来難(がた)かる世はつづき窓開く日を偏(ひとへ)に願ふ」 「As our contacts with the world Remain difficult, I earnestly hope for a day When the window opens to the world 」 (背景) 陛下は、昨年に続き新型コロナウイルス感染拡大の収束を願う気持ちを歌に詠まれました。昨年は、人々の努力が実を結び、収束していくことを願う気持ちを詠まれました。今年は、コロナ禍が収束したその先に、今大きく落ち込んでいる世界との人々の往来が再び盛んになる日の訪れを願う気持ちを詠まれました。 【皇后さま:御歌】 「新しき住まひとなれる吹上の窓から望む大樹のみどり」 「Looking through the windows Of the Fukiage Palace our new residence, We enjoy the greenery Of the great trees around us」 (背景) 両陛下と愛子さまは、昨年の9月、それまで長く住んでいた赤坂御所から、上皇ご夫妻の長年のお住まいだった吹上御所に引っ越しされました。皇后さまが上皇ご夫妻への感謝の気持ちを新たにしながら、大きな木々の緑深い御所からの眺めを詠まれた歌です。 【秋篠宮さま】 「窓越しに子ら駆け回る姿を見 心和みてくるを確かむ」 「Through the window I see the children running about, and I sense a calmness growing in my heart」 (背景) COVID-19の感染拡大に伴い、多くの学校で分散登校や遠隔授業が行われていた時期があり、部活動を思うように行えない時期も長く続きました。 秋篠宮さまは、毎年講義を行っている大学の建物から見える学校の児童生徒が校庭で元気に過ごしている姿を目にし、そうした時期のことを思い起こしながら、一時(ひととき)の安心感を覚えられたそうです。 【愛子さま】 昨年末に成年を迎えた愛子さまが初めて歌会始に出された歌です。 「英国の学び舎に立つ時迎へ開かれそむる世界への窓」 「As I stand before The House of learning where I shall study in Briteain, I feel the windows to the world Are opening up to me」 (背景) 愛子さまは学習院女子高等科二年生の夏休みに、イギリスの全寮制の私立学校、イートン校の寮に泊まり、語学研修を中心に博物館や史跡などを訪問して総合的な文化体験学習をする「イートン・サマースクール」に参加されました。 初めて外国の学校を訪問し、歴史の重みを感じさせる立派な建物を目の前にした時、今、ここから世界が開かれようとしているという心持ちになり、約3週間にわたる英国での滞在への期待に心を弾ませる気持ちを詠まれた歌です。 【佳子さま】 「窓開くれば金木犀の風が入り甘き香りに心がはづむ」 (背景) 佳子さまが、秋のある日に部屋の窓を開けると、金木犀の香りが風にのって漂ってきました。甘い香りにふれて嬉しい気持ちになったことを歌に詠まれました。 【常陸宮妃華子さま】 「幼子は新幹線の窓に立ち振りむきもせず川ながめゐる」 (背景) 華子さまは、地方訪問の折に、新幹線で小さな子供が窓際に手で掴(つか)まり、熱心に富士山の雄大な景色や川に集う鳥たちを眺めていた姿を思い出し、この歌を詠まれました。 【寛仁親王妃信子さま】 「成人を姫宮むかへ通学にかよふ車窓の姿まぶしむ」 (背景) 信子さまは、愛子さまを年少時より深い敬意と愛情を持って見守ってこられました。愛子さまが成年を迎えられた喜びは大きく、通学のためお住まいを出発する際の髪も綺麗に整い健やかな愛子さまの様子を車窓越しに見た時の心境を詠まれた歌です。 【彬子さま】 「蛍光灯映る窓辺に思ひだす大正帝の螢雪の苦を」 (背景) 大正天皇が「修身習学在文園 新固宜知故亦温 勿忘古人蛍雪苦映窓燈火郭西村」と詠み、学習院の学生に示した漢詩があります。彬子さまが研究室で仕事をしていた折、ふと窓の外を見ると、もうすっかり日が暮れていて、窓に蛍光灯が映っていたので、この漢詩を思い出して詠まれました。 【高円宮妃久子さま】 「車窓より眺むる能登の広き海よせくる波は雪降らしめつ」 (背景) 車の窓から見た能登の海と雪が降っている寒々とした情景を詠まれた歌です。 【承子さま】 「コロナ禍に換気もとめて閉ぢぬ窓エアコン眺めてしばし案ずる」 (背景) コロナ禍で、窓は「開けるもの」から「開いているもの」に変わり、暑さや寒さを感じる度に、エアコンか環境保護か、と葛藤する気持ちを詠まれた歌です。 来年の「歌会始」のお題は、「友」と決まりました。