ミニPCを買うならまず5万円台を狙え!コスパ最強の厳選おすすめモデル6選
約1年後に迫るWindows 10のサポート終了に備えてデスクトップPCの買い換えを検討しているなら、まずはミニPCをオススメしたい。大手メーカー製PCと比べるとかなり安い上、CPUの基本性能やサポートするインターフェイスが充実したこともあり、買い得感の高いPCだからだ。 【画像】AMDの最新CPUの1つ「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載するMINISFORUMの「EliteMini AI370」の直販価格は16万5,980円 ただ非常に多くのメーカーがさまざまなミニPCを発売していることもあって、ユーザーからは「何を買えばよいのかサッパリ分からない」という声も聞こえてくる。そこで今回は、現状でもっともコストパフォーマンスに優れる5万円台ミニPCの特徴を解説するとともに、オススメの6モデルを紹介しよう。 ■ 買い得感が高い中堅モデルのミニPC。AMDのRyzen 6000シリーズは特にオススメ! 手のひらに乗るようなサイズを採用する一般的なミニPCだと、実売価格が1(!)~3万円台の「低価格モデル」、4~7万円台の「中堅モデル」、8~12万円台の「高性能モデル」の3つにおおむね分類できる。低価格モデルでは基本的にIntelの「N100/95/97」を搭載し、高性能モデルではIntelやAMDの最新世代か1つ前の世代の高性能なCPUを搭載する。 中堅モデルはどんなCPUを搭載するかと言うと、AMDならRyzen 7 5000/6000/7000シリーズ、Intelなら12世代のCore i5が主流だ。こうしたCPUの特徴は、高性能モデルが搭載する高性能な最新CPUと比べると世代が古く、性能もやや劣ることである。価格差を考えれば仕方のないところではある。 とはいえ、世代が古くても、CPUコアや搭載するインターフェイスは高性能モデルに劣る部分は少ない。書類作成や音楽/動画配信サイトの視聴などの軽作業であれば、高性能モデルと比べてもまったく遜色はない。ディスプレイ出力端子は、中堅モデルでも4K解像度で60Hzのリフレッシュレートに対応しており、マルチディスプレイ環境で利用できる。2.5GbE対応有線LANポートやWi-Fi 6対応も、中堅モデルまでなら一般的になってきた。 一方で、CPUが内蔵するGPUの性能はかなり違う。特に最新のAMD製CPUを搭載する高性能モデルでは、グラフィックス描画性能がかなり向上しており、フルHD(1,920×1,080ドット)解像度なら最新PCゲームも結構遊べるようになってきた。中堅モデルの内蔵GPUは、こうした高性能モデルにはおよばない。 しかし7、8年前のFPSゲームやストラテジゲームなら必要十分のレベルはサポートしており、まったく遊べないわけではない。ここは低価格モデルではまったくカバーできない分野であり、中堅モデルを選択する1つの理由となる。価格帯を考えれば「中途半端」ではなく、「バランスのよさ」を感じる部分だ。 次に中堅モデルが搭載するCPUの基本性能について簡単に解説しよう。性能の序列はブランドとモデルナンバー、そしてCPUの世代による性能差で決まる。Core i7とCore i5、Ryzen 7とRyzen 5といったブランド名による序列は理解しやすいので割愛するが、とにかくややこしいのが複雑に入り組んだAMD製CPUの世代とモデルナンバーだ。 Intel製CPUを搭載する中堅モデルのミニPCはほぼ12世代Coreシリーズなので、性能はブランドとモデルナンバーだけで比較的簡単に把握できる。しかしAMD製CPU、特にRyzen 7000シリーズはやっかいで、性能が大きく異なる複数のCPUコアとGPUコアが入り交じっており、モデルナンバーの大小を確認しただけでは判別が付きにくい。 下の表は、モバイル向けのRyzen 5000/7000シリーズが搭載するCPUコアとGPUコアのアーキテクチャを整理したものだ。先ほど紹介したRyzen 7000シリーズ、そしてRyzen 5000シリーズでは、異なるアーキテクチャのCPUコアやGPUコアが同じシリーズに含まれており、特にノートPCの購入時にユーザーを悩ませる要因になっていた。これはミニPCでも同じだ。 ※1中堅モデルの中では本体価格は比較的高め ※2価格帯で分ける場合は高性能モデルに入ることが多い CPUコアのアーキテクチャは、性能が高い順にZen 4、Zen 3+≒Zen 3、Zen 2となる。GPUコアのアーキテクチャはRDNA3、RDNA2、ちょっと離れてVEGAといった感じだ。こうした観点から各CPUを見ると、単純に「モデルナンバーの数字が大きいRyzen 7000シリーズだからRyzen 6000シリーズより性能が高い」とは言えないことが分かる。 ただし幸いなことにミニPCでは、Ryzen 7020シリーズと7030シリーズを搭載するモデルはほぼ見当たらない(今後は分からないが)。そのため中堅モデルを購入する際、現状で判断に必要な大原則は以下の2つと考えてよい。 1.Ryzen 6000シリーズのRyzen 7とRyzen 7 7735HSの性能はほぼ同じで、中堅モデルではトップクラス 2.Ryzen 5000シリーズとIntelのCore i5シリーズがそれに次ぐ 実際にこれらのCPUを搭載する中堅モデル同士で基本的なベンチマークテストを行ない、その結果を比較したのが下のグラフである。PCMark 10と3DMarkは数値が大きい方が性能が高く、TMPGEnc Video Mastering Works 7は短い時間で処理を終えるモデルのほうが性能が高い。 結果を見ると、Ryzen 7 PRO 6850Hを搭載するGMKtecの「NucBox M7」の性能は、Ryzen 7 7735HSを搭載するBeelinkの「SER6 Pro 7735HS」に非常に近い。ちなみにブランド名の末尾に「PRO」が付くのは企業向けの管理機能に対応したモデルであり、性能に影響する違いはない。 Core i5-12600Hを搭載するMINISFORUMの「NAB6 Lite」と、Ryzen 3 5425Uを搭載するGMKtecの「NucBox G6」が、それら2モデルに続く。Intel N100を搭載する低価格なBeelinkの「EQ12」は、高性能/中堅モデルと比べると性能面では大きな開きがあることも分かる。性能を軸にミニPCを選択したいなら、こうした結果も踏まえて選択すると良いだろう。 ■ 性能的に特におすすめなAMD上位モデル □Ryzen 7040ながら5万円台半ば。圧倒的なコストパフォーマンスに驚く「UM760 Slim」 CPUコアは「Zen 4」アーキテクチャ、GPUコアは「RDNA3」アーキテクチャのRyzen 7040シリーズに属する「Ryzen 5 7640」を搭載しながらも、価格帯的には中堅モデルに位置しており、コストパフォーマンスではずば抜けた存在と言ってよいだろう。 底面にもSSDやメモリを冷却するための小さなファンを装備しており、長時間連続して負荷がかかる状況でも安心して利用できる。 □Ryzen 6000の上位搭載。OCuLink搭載でグラフィックス機能を強化可能「NucBox M7」 Ryzen 6000シリーズの中でも上位モデルに位置する「Ryzen 7 PRO 6850H」を搭載する。上でも解説している通りRyzen 7 7735HSとほぼ同等の性能ながら、割引きクーポンなどを含めると5万円を切るという価格には驚く。 さらに市販のビデオカードをアダプタなどを介して接続し、3D描画機能を大幅に強化できるOCuLinkを搭載するなど、拡張性に優れている。ミニPCでは珍しいアクリルの天板を採用しており、SSDやメモリを冷却するための比較的大きめなファンがアクリル越しに確認できる。 ■ 珍しい電源内蔵もあるIntel CPU搭載モデル □USB Type-C背面2基で4画面対応。指先1本で簡単に内部にアクセスできる「NAB6 Lite」 高性能コアを4基、高効率コアを8基搭載し合計16スレッドに対応する「Core i5-12600H」をCPUとして搭載する。背面にHDMIを2基、DisplayPort Alt Mode対応のUSB Type-Cを2基搭載し、合計4台のディスプレイを利用できる。 映像出力対応のUSB Type-Cを背面に搭載するため、ディスプレイケーブルを引き回しやすい。また天板の固定方法がシンプルなロック式で、指先でぎゅっと押すだけでロックが解除されて内部にアクセスできるため、メモリやSSDの交換やメンテナンスがしやすい。 □電源機能を内蔵する珍しいミニPC。Core i5搭載のミニPCではかなり安い「EQi12」 だいたい2年前の薄型モバイルノートPCに搭載されることが多かった「Core i3-1220P」をCPUに採用するミニPC。ACアダプタを利用することが多いミニPCでは珍しく、電源部分を本体に内蔵しており、電源ケーブルを直接挿すだけで電源を供給できる。 メモリは直付けのLPDDR5なので増設はできないが、中堅モデルとしては珍しく合計24GBも搭載している。底面には2基のM.2スロットと、SSD用の大型ヒートシンクや冷却ファンを備える。 ■ Intel N100とガチ価格勝負でも性能が高いAMD下位モデル □底面吸気でSSDやメモリも自然に冷却。85Wの電源ユニットを内蔵「EQR5」 8コア16スレッド対応の「Ryzen 7 5825U」を搭載するミニPCだ。CPU冷却用の大型ヒートシンクやファンを搭載するほか、大きめな吸気口を底面に備え、底面側に組み込むDDR4メモリやM.2 SSDを自然な空気の流れで冷却できる構造を採用する。 同じBeelinkのEQi12と同様に電源ユニットを本体に内蔵しており、めがねタイプの電源ケーブルを直接挿して電源供給できる。 □N100とガチンコ勝負の価格帯。しかし性能は圧倒的に上でWindows 11も余裕の「NucBox G6」 Ryzenシリーズの中ではローエンドに近い4コア8スレッド対応の「Ryzen 3 5425U」を搭載するミニPCだが、驚くべきはその価格である。メモリ16GBでSSD 512GBという“きちんと使えるスペック”ながら3万円台前半と、Intel N100搭載の低価格モデルに近い価格なのだ。基本性能はN100モデルをぶっちぎっていることを考えると、このモデルのコストパフォーマンスもズバ抜けて高い。 M.2スロットは2基でSSD用のファンも装備するほか、ネットワークのスペックも最近のミニPCらしい必要十分な構成だ。 ■ 割引きクーポンやセール価格に注目。中堅モデルは一期一会なのでためらいは禁物 最後に中堅モデルの「買い方」について補足したい。特にAmazon.co.jpで購入する際に注意したいのが、販売店舗による価格差だ。ミニPCでは同じモデルなのに違う店舗が販売していることがよくあって、しかも店舗ごとに価格が違うだけでなく、割引きや値引きクーポンが異なることも多いのだ。さらには楽天市場に出店しているメーカーもある。それぞれの店舗における最安値をしっかり調べた上で、賢く購入したい。 もう1つの注意点は、中堅モデルは品切れになりやすいことだ。数日前には販売していたモデルが、今日には売り切れているということもよく見かける。古い世代のCPUを搭載していることも影響しているのか、品切れ状態になると簡単には再入荷しないし、そのまま販売終了ということも多いため、気になるモデルがあるならすぐに価格や在庫状況をチェックし、必要ならすぐに買うくらいの気持ちでいた方がよさそうだ。
PC Watch,竹内 亮介