「私にもこんなヤバいことがありました」ボロ負けした蓮舫が政治家として返り咲く唯一の方法
一番じゃなくてもいい、完璧じゃなくてもいい
2020年の都知事選の際には、ノンフィクション作家・石井妙子氏による『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が発売されます。カイロで小池氏と生活を共にしていた女性によると、小池氏はカイロ大学を卒業していないそうです。しかし、学歴詐称であるという決定的な証拠はなく、あくまでも疑惑の域にとどまっています。その代わり、多くのページを割いて、小池氏の“偽装”が描かれています。芦屋の社長令嬢だったことは事実だけれども、お父さんは実質働いておらず、カイロ大学の学費も自分で工面していたこと、若い頃から男性あしらいがうまかったこと、テレビの仕事をするようになったら、突然目がぱっちりしたこと。 石井氏は今日の小池氏を作る原動力となったのは、生まれつきのアザだと信じているようです。顔にキズがある政治家と言えば、愛知県知事・大村秀昭氏は、子どもの頃に犬に顔をかまれ、その時に負った傷のせいでいじめられることもあったそうです。大村氏は東大法学部を経て官僚となり、政治家に転身していますが、「顔にキズがあるから、政治家になった」という人はいないでしょう。図らずも「女帝 小池百合子」は、生まれや育ち、見た目という自分の力ではどうしようもないことに女性だけがいつまでも縛られ、そこから自力でなんとか這い上がろうとすると叩かれるという抑圧を浮き彫りにしたのではないでしょうか。「小池さんってこんなヤバい人だったんだ!」と書籍は大ヒットする一方で(手に入れるの大変でした)、SNSではオトコ社会をタフに生き抜く小池氏に共感したり、過去の交際相手まで触れられることについて「かわいそう」という意見も少なからず見られましたが、結局、選挙では勝っています。これが「小さく負けて、大きく勝つ」技です。今回の選挙でも、学歴詐称疑惑が持ち上がりましたが、決定的な証拠がないのであれば「小池さんもいつまでも言われて大変ね」という一種のキャンペーンになったのではないでしょうか。 蓮舫氏は小池氏ではないのですから、同じ作戦を取れと言うつもりはありません。ただ、弱いとか完璧でないことは、悪い事ではないと思うのです。蓮舫氏は双子のお子さんのお母さんで、政治家をしながら子育てを完璧にするということは、並大抵のことではなかったことでしょう。弱みを見せたくない人なのかもしれませんが、「私にもこんなヤバいことがありました」と弱みを見せることで、より多くの人が彼女の話に耳を傾けるようになるのではないでしょうか。「一番じゃなくてもいい、完璧じゃなくてもいい」、蓮舫氏がそう言えるようになったときが、彼女の政治家としての第二幕の始まりなのかもしれません。 <プロフィール> 仁科友里(にしな・ゆり) 1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」
仁科友里