447万円7000円のミツビシ新型SUVは復活の鍵になるのか?
こんなにスポーティでいいんでしょうか!?
エクリプス クロスPHEVを楽しめる場面のひとつは、ワインディングロードだ。もちろん市街地ではスムーズで、乗り心地も悪くない。とはいえ、車両運動統合制御システムであるS-AWC(Super All Wheel Control)で「ターマック」を選択したときに、本領を発揮するのだ。 ターマックとは、自動車競技であるラリーで”舗装路”を意味する。ダートや砂利道に対する概念で、箱根や日光など、自動車用の山岳路のほとんどはターマックだ。くねくねと屈曲する舗装路を走るためのモードがエクリプス クロスPHEVのターマックなのだ。 ターマックを選ぶと、パワープラントの出力特性が変わる。ガラリといっきに、というかんじで大きく変わる。アクセルペダルの踏みこみには敏感に反応。飛び出すように加速する。 同時に、「AYC(アクティブヨーコントロール)」機構がより積極的に各ブレーキを制御することで、ステアリング・ホイールを切ったときのボディの動きをより機敏にしている。たとえばカーブを曲がるときは、内輪側にブレーキをかけ、積極的に車両のノーズが内側を向くようにしているという具合だ。 サスペンション・システムはダンパーもスプリングも、電子制御はいっさいなし。にもかかわらず加速とブレーキの制御だけで、前後左右の荷重コントロールまでうまくおこない、結果「こんなにスポーティでいいんでしょうか!?」と、驚くほどのハンドリングを味わえるのである。こうして、キャラクターがきちんと確立されているのだ。
自慢のオーディオ
メカニカルレイアウトは、2.4リッター直列4気筒ガソリンエンジンにくわえ、フロントとリアにモーターを1基ずつ搭載。三菱名づけるところの「ツインモーター4WD」だ。 ピュアEVとして満充電時は57.3km(メーカー発表値)走行可能だ。駆動用バッテリーの残量が既定量を下まわれば、エンジンが始動する。 エンジンとモーターの制御モードは3種類。ひとつはEVモード(モーターのみで走行)、それからエンジンが充電のために動くシリーズ走行モード、そして急な追い越し加速時などはエンジン主体のパラレル走行モードだ。 「距離にもよりますが、通勤使用などの場合、多くの人はほぼEV走行でこなせると思います」(EVパワートレイン技術開発本部の半田和功担当部長)という。エンジンとモーター併用時の燃費もリッター16.4kmと、高効率だ。 インテリアの質感も高い。走行中にブラインドタッチできるような機能的な操作類のデザインと、試乗車のオフホワイトのレザーシートは、ともに納得できる質感だった。 くわえて、「自慢はオーディオ」と、前出の水野氏が言うように、たしかに音楽もかなりいい音質で楽しめる。外部メーカー製を採用しているのではなく、自社内開発のオーディオシステムという。 室内の静粛性は高いので、ベートーベンのような高音から低音までのダイナミズムが広い楽曲も受け付けるし、もちろん、昨今のドゥア・リパの迫力あるニューディスコサウンドだろうと、ブラッド・メルダウの繊細なピアノジャズだろうと、よく鳴る。 開発側は、少しだけトレブル(高音域)をあげた設定にしたそうで、きれいな高音部分を味わってもらいたいとのこと。たしかに、英国のジョージャ・スミスのジャズボーカルなどは最高で、クルマを駐めたあとも聴いていたくなった。 室内にいると、(ターマックモードを選ばないかぎり)まことにおとなっぽいクルマを操っている印象だ。全長4545mmのボディは扱いやすいサイズで、2670mmのホイールベースはじゅうぶんな室内スペースを提供してくれている。おとなもゆったり後席に乗っていられる。 「ダイナミックシールド」と名づけられた三菱車独自のクロームの加飾をはじめ、外観の印象が若々しいので、これにやや抵抗感をおぼえるひとがいるかもしれない。白状すると、私もそうでした。 でもまぁ、ドライブの楽しみを求めてエクリスプス クロスPHEV(384万8900円~)を買うひとには、乗る前からヤル気にさせてくれるスタイリングであることはたしかだ。 ワインディングロードを走るのが好きなら、いちど試してみてほしい。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)