満蒙義勇軍展、大きな注目 会期2カ月 2023年度1年分超 水戸・内原郷土史資料館 茨城
茨城県水戸市内原郷土史義勇軍資料館(同市内原町)で7月後半に開幕した企画展が約2カ月の会期ながら、2023年度の1年分を超える多くの来館者を集めている。市外や県外からの来館が4割強と、例年になく多くを占めている。満蒙開拓青少年義勇軍に対する関心が全国に広くあり、同展を通して大きな注目を集めた形だ。11日には長野県阿智村の満蒙開拓平和記念館の関係者が視察。義勇軍を描く漫画や状況を解説したパネルを見学し「満蒙開拓の本質に迫る内容」と高く評価した。 義勇軍の10代の若者は、第2次世界大戦前から同戦中にかけ、同市内原町から旧満州国(中国東北部)に送り出された。同展では、元隊員が義勇軍の日常などを描いた漫画160ページと、現存する原画を紹介。さらに、同漫画の中では描かれなかったソ連との交戦やシベリア抑留を巡る元隊員の日々について、資料館が独自に家族から聞き取った内容を文章で説明している。 同館によると、同展が開幕した7月20日から9月11日までの来館者数は1483人。会期中だけで最終的に1800~2000人に上る見込みだ。 同館の年間来館者数は18年度が1931人。コロナ禍の20年度は876人まで落ち込み、23年度は1475人だった。関口慶久館長は同展の来場者数について「前例のない数字。一過性のイベントにせず、継続して満蒙開拓の歴史を伝えたい」と話す。 満蒙開拓に特化した博物館は、全国に内原と長野の2館しかない。この日は満蒙開拓平和記念館から三沢亜紀事務局長が訪れ、特に交戦や抑留の解説パネルに注目した。 三沢事務局長によると、記念館とも親交があった原画所有者の末広一郎さん=広島市、今年5月死去=は、交戦や抑留などにまつわる悲惨な部分での描写が薄いため、「開拓を美化しないか」と漫画の書籍化に悩んでいたという。三沢事務局長は「展示は、元隊員の長男が聞いた未完部分を記して記憶を掘り起こしている。体験者が伝え切れなかったことをいかに伝えるかが大切で、博物館の役割を感じる」と話した。 同展の会期は23日まで。
茨城新聞社