“バーチャルこそリアル” 既存ビジネスの当たり前を覆すZ世代。エリック教授と考える、新時代への“大人たち”の向き合い方とは
世代を超えたコミュニケーションが次の時代を作る。Z世代とのコミュニケーションにおける“大人たち”へのヒント
ーエリックさんはZ世代とかかわる時にどんなことを大切にしていますか? 同じ目線に立って、対等なコミュニケーションを取ることですね。僕は長く海外にいていろいろな差別を受けて、そういうものがおかしいと感じて生きてきました。だから、人はみんな平等であり、全ての人が同じ目線で話せたらいいなというのが基本の考えなんです。ずっとそのスタンスで変わらずに接していますね。先生と生徒という関係も取っ払ってフラットな関係から学べればいいなと思っています。 ー対等なコミュニケーションとは、どんなものなのでしょうか。 “対等”って、ずけずけと物を言うことではなくて、お互いに愛と敬意を持つことだと思うんですよ。それは立場の違う人でも、ちょっと苦手だと思う人でも一緒です。 僕と同世代の人からも若者からも人間関係について相談されるんですけど、どちらにも共通しているのが、相手を変えようとするんですよね。でも、相手の性格は簡単には変えられないじゃないですか。だから、自分を変えるんです。 「この人、嫌だな」と遮断するんじゃなくて、「この人にもいいところがあるだろう」と、敬意の目で見てコミュニケーションを取ることから始める。そうしていると、だんだん「いいところ」を起点に相手を見られるようになるんですよ。そうすると相手も自分も心地が良くなって、お互いに敬意を持った対等なコミュニケーションが取れるようになるんです。 ー世代や立場が上か下かに関係なく、お互いが敬意という同じ土台に立ってコミュニケーションを取るのですね。 それが次世代のコミュニケーションだと思います。年上の人が教えるのではなくて、お互いに学び合う。そういう感覚って今までなかったと思うんですよ。 ただ、今はいろいろなハラスメントがあって怖くて何も言えない、どうしていいかわからないと、会話の機会が減っていると思います。でも、それは「Z世代はこうなんでしょ」と思い込んで遠ざけてしまっている僕らが変わるべきだと思います。 遠ざけるのではなく、ひとり一人に向き合って声を聞くこと。「俺の時はこうだったんだけど、あなたにとってこのやり方はどう?」と聞いてみるだけで全然違うと思います。そして、これは面倒なステップではなく、商品開発からマーケティング、人の管理、組織も全てが、次の時代へ向けて良い方へ変わるチャンスなのではないでしょうか。 Z世代はその消費行動に対してSNSから多大な影響を受けているのと同時に、価値観が「個」へと収束している。過ごしてきた時代が全く異なる“大人たち”は、そんな彼らを取り巻く環境や、彼らならではの価値観でまだまだ分からないことだらけだろう。しかし、大人たちがZ世代に対してそう感じるのと同様に、Z世代もまた、“大人たち”の世代を知らない。そのお互いの間にあるギャップこそがコミュニケーションの難しさであるが、その一方で共創の可能性を秘めている部分だ。まずは今ある思い込みを捨てて対等な目線に立ち、敬意をもって接することがその可能性を切り拓くための第一歩となるだろう。
文:安藤 ショウカ /写真:小笠原 大介