“バーチャルこそリアル” 既存ビジネスの当たり前を覆すZ世代。エリック教授と考える、新時代への“大人たち”の向き合い方とは
企業の未来を左右するZ世代。経営に与えるインパクトとは
ーZ世代の心を掴めるか否かは、企業の経営をどう左右すると考えますか? 「個の時代」の今、Z世代は僕らの世代よりも自分の人生について真面目に考えています。だから、自分自身の自立や人生の豊かさを求めて、モノの消費より社会貢献を求めるようになってきているんですよ。実は、これが経営者がZ世代に対して一番分かっていない部分だと思います。 以前、学生に航空会社の「カーボンオフセット」の取り組みについて話をしたことがあったんですね。大体の大人は、大手の航空会社取り組みなら安心だと思うじゃないですか。でも意識の高い学生は、本当にそのカーボンオフセットの仕組みが環境を良くしているのかを調べるんですね。そうすると、「もしかしたら営利目的の会社が入っているんじゃないか」「僕たちがお金を出しても悪い方へお金が流れるんじゃないか」と言うわけです。 ほかにも、就職先の企業を選ぶ際に「この企業は社会にとってどういう価値があるんですか」と聞かれることも多々あるんですよ。Z世代の若者たちは、そういうESGの観点で企業を見るようになってきているのをひしひしと感じています。 だから、今後は地球規模の社会課題への意識がブランドイメージに大きく関わってくると思いますね。逆に言えば、社会に対する意識の低さが出た会社は一瞬にして滅びてしまうでしょう。 また、これは消費者からの評価だけではありません。社会貢献に対して意識の高いZ世代が入社してきた時、会社はそれに耐えうるのか。エクセルに並んだ“数字”だけにびくびくしているような上司たちが、果たしてその新入社員たちが求めるものに応えられるかどうか。そこはZ世代に学んで変わっていくべきところだと思いますね。 ーZ世代が求めるものに応えるために、企業はどうすべきでしょうか。 社会貢献に対する意欲や行動がブランドの価値を上げていくのであれば、社会貢献している商品の価格は上げるべきだと思います。これは、日本が世界で生き残っていくためにも重要です。日本は価格を上げることに抵抗がありすぎます。 今の時代、どんな商品でも国際競争力が求められます。その中でも、日本は単価や給与の関係で下げ止まりが来るので、単価を上げる商売をしなければなりません。だから、価格が高いものや質の良いものをどうやって売っていくか、という方向にシフトしないと日本は市場で生き残れないのです。 例えば、日本酒がその良い例です。日本酒がなぜ世界の一流レストランでなかなか売れないかというと、単純に安すぎるからです。どんなに美味しくても、価格の安いものを一流レストランでは出せないですから。世界に受け入れられる為に価格を上げるという施策も必要なのです。ある意味で超一流の日本酒の杜氏はお金持ちになるべきで貧乏な生活を送っていてはいけないと言うことです。 ESGは難しいことを考えることではなく、サプライチェーン全体を見て、みんなが幸せになれるような構造を作ることとも言えます。そして、どのステークホルダーからも、Z世代からも選ばれる企業になっていくことが求められていると思います。そのためにもESGの観点からのストーリーや、透明化させた発信をすることは効果的ですよね。 ーZ世代は、市場だけでなく経営までも左右する存在なのですね。 マーケットを支えているのはZ世代になってきているわけですから、その存在やインパクトは大きいですよね。逆に、上の世代の方が市場としては小さくなっていきます。それを考えると、むしろZ世代に従うべきでしょう。「まだ若いからー」「俺の成功体験はこうだからー」なんて上の世代がZ世代に言うような時代ではないんですね。 見渡してください。Z世代はみなさんの会社の中にもいるじゃないですか。実は、成功のカギは社外だけでなく社内にもあるんですよ。既に会社の中に沢山のアイデアを持っているわけですから、その身近なZ世代とコミュニケーションを取っていくことが成功への近道だと思います。