21年ぶり大関同士の相星で激突した「琴櫻」と「豊昇龍」、躍進を支えたそれぞれの努力とは? 不振「大の里」はまだこれから【音羽山親方の九州場所総括】
「自分の型」を身に付けた豊昇龍
――一方の豊昇龍関はここ数カ月でだいぶ体が大きくなって、霧島関をつり出した一番(14日目)などは、おじさんの横綱・朝青龍関ばりの豪快な相撲だったと思います。 音羽山親方:じつは私は、九州場所前に豊昇龍の稽古を見る機会が多かったんですよ。彼は学生時代にレスリングをしていたこともあって、投げ技が得意。強引に投げに行って、肩を負傷したり、自滅したりすることもあった。 体を大きくすることで、相手に頭から当たって、前に出ていくという正攻法の相撲が通じるようになってきました。場所前にその稽古を繰り返し、「自分の型」を身に付けたことも、今場所の自信になったのだと思います。
大の里は苦い経験を糧に飛躍を
――そして、新大関として連続優勝も期待された大の里関でしたが、千秋楽に関脇・霧島関に勝って、9勝(6敗)という成績に終わったのは残念でした。 音羽山親方:私も経験がありますが、「新大関」や「新横綱」に昇進すると、普段の生活でもいろんな意味でプレッシャーがかかってくるものなんです。 大の里も10月の秋巡業で、故郷の石川県や学生時代を過ごした新潟県に「凱旋」して誇らしい反面、疲れも重なったんだと思います。その後、アデノウイルス感染症を発症して、秋巡業を休場してしまいました。調整がうまくできなかったことが、不振の原因だと思います。 大の里は力士としての経験もまだ浅いし、相撲以外のことで覚えることもたくさんあるんです。今回の苦い経験を糧に、来年は大関として恥ずかしくない成績を残してくれると期待したいですね!
40歳での三役も叶うのではないか
――そして、先場所、今場所と話題になったのが、九州場所中に40歳を迎えた玉鷲関です。通算連続出場は史上1位を更新中、40歳で、加えて幕内で勝ち越した力士は、旭天鵬関(現・大島親方)を含めて、昭和以来4人目という快挙です! 「長持ち」の秘訣を、親方はどのように見ていますか? 音羽山:いやぁ、もうすばらしい! のひとことですよ。彼のよさは、今も昔も(準備運動など)やることが変わっていないということ。普段から手を抜かないで、一生懸命やっているところは尊敬に値します。 じつは、彼は私より1歳年上で、たまたまモンゴルから東京に遊びに来た時に(当時、鶴竜が所属していた)井筒部屋にフラッと現れた。そこからいろいろな縁があって、玉鷲は片男波部屋に入門するわけなんですが、まさか私よりも長く相撲を取るとは思っていませんでした(笑)。私は35歳で引退していますから、「40歳で現役」なんて、夢のようですよ。 そして、気持ちが若々しいですね。今場所は久しぶりに勝ち越して、インタビューでどんな話をするんだろう? と興味を持っていたら、「早く三役に戻りたい」と言っていた。もうこの年齢になれば、「まあ、そこそこでいいや」なんていう諦めの気持ちも出てくるものですが、常に上を目指している。彼なら、40歳での三役も叶うのではないかと思います。