PCR検査拡充されず「フラストレーションあった」 専門家会議
新型コロナウイルス対策を検討する政府の専門家会議が4日開かれた。その後の記者会見で、副座長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構・理事長)は、国内におけるPCR検査数が諸外国に比べて少なく、「必要な人が受けられるようにするべきだと専門家はみんな思っている。今のままでは不十分。早い時期から議論したがなかなか進まなかった。これにはフラストレーションがあった」などと言及した。 【会見ノーカット】新型コロナ「新しい生活様式」とは? 政府の専門家会議が会見
PCR拡充、日本はなぜ遅れた?
尾身氏は、日本でPCR検査の拡充が遅れた原因について「過去を振り返る必要がある」としたうえで、大きく2つの点を挙げた。 1点目については、「日本は感染症の法律も制度的にも地方衛生研究所が主体でやってきて、例えば麻疹(はしか)、結核(けっかく)の審査は仕事の一環だが、新しい大流行の病気を大量に検査するという仕組みになっていなかった。(これは)いい悪いではなくて、日本の制度だ」と指摘。 2点目については、「日本は幸いSARSが2003年、国内で大流行が起きなかった。当然、幸いだったが、事実として(流行が起きた)韓国とかシンガポールは感染症対策を激しくやった。日本はPCR検査能力の拡充の機運が起こらなかった」と述べた。
拡充を困難にしている6ポイント
また、今後PCR検査を拡充するにあたり困難になっているポイントとして以下の6点を挙げた。 (1)保健所の業務過多(尾身氏は職員がかなり減らされてきた点も問題視) (2)入院先を確保する仕組みが十分に機能していない地域があった (3)地方衛生研究所は人員削減の中で通常の検査業務をしなければならなかった (4)検体採取者、マスクや防護服など感染防護が圧倒的に不足している(尾身氏は、このため医師らが検査に二の足を踏む原因になると補足) (5)一般の医療機関が検査をするには都道府県と契約する必要があった。 (6)民間検査会社には運ぶための特殊な輸送機材がなかった
今後、認められる対応
そして、今後求められる対応としては以下の6項目を挙げた。 (1)保健所、地方衛生研究所の体制強化、負担軽減 (2)都道府県調整本部の活性化 (3)地域外来・検査センターのさらなる設置 (4)感染防護具、検体採取キット、検査キットの確実な調達 (5)検体採取者のトレーニングなど (6)PCR検査体制の把握、検査数や陽性率のモニター公表 尾身氏はこれらを説明したうえで、医師が検査が必要だと判断した患者は、軽症者であっても迅速、かつ確実に検査する体制に移行すべきだ、と主張。これまでの「37.5度の発熱が4日続いた場合」などとされた受診ガイドラインについても、見直すことを求めているという。