室井滋さんが語る故郷 見栄を張らない富山人気質は自分を楽にしてくれる
絵本作家としても活躍する室井滋さんは「しげちゃん一座」を率いて、絵本の朗読やトーク、音楽演奏などのライブショーを全国各地で開いています。俳優としては、史実を基に制作された出演映画「大(だい)コメ騒動」(本木克英監督)が1月に公開されました。この映画で室井さんは一揆を起こす女性たちのリーダー「清んさのおばば」を力強く演じています。地元の富山県が舞台。故郷への愛が言葉の端々から溢(あふ)れ出ます。コロナ感染拡大の中でのライブや映画についても、思いを語っていただきました。
朗読するたび、心の中で動くものが違うんです
――2011年に結成された「しげちゃん一座」はどのようなきっかけで始まったのですか。 最初に書いた絵本「しげちゃん」(金の星社)が、ビギナーズラックというか、たくさんの人に読んでもらえて、絵を描いた長谷川義史さんと講演の依頼がありました。私は朗読が大好きなので、すごく楽しかった。その後、別の機会に、演奏家の大友剛さんと岡淳さんに来てもらったら、異常に盛り上がって。それを見に来ていた方にまた呼ばれて。ホール、公民館、お寺、廃校になる小学校、ディナーショー……。ライブをやりたくてどんどん絵本を書くようになったんですよ。 ――エッセーもたくさん書かれていますが、絵本ならではの魅力はなんでしょうか。 絵本はレコードやCDと同じで何回も何回も読まれるものです。無駄があってはいけないし、より吟味して率直に心に届くような言葉を選ばなければいけない。想像の膨らまし方も、絵本は、その人がどういう状況で手に取ったかによって、随分変わると思います。「会いたくて 会いたくて」(小学館)も、失恋したときと、何年かして別の方と出会われてお子さんが生まれたときとでは、読んで感じること、見えてくる風景が違ってくると思います。 ライブのラストでは、「しげちゃん」を必ず朗読します。年間30ほどのステージがありますが、毎回、胸が熱くなったり、声の出し方が変わったり。ツアーでも、前日と次の日では自分の心の中で動くものが違います。うまくいったとかいかなかったとか、そういうことではなくて、しげちゃんは私なのに、ここはこんな風に読んだ方が気持ちが伝わるんじゃないか、もうちょっと大人っぽくてもいいかなあ、と初めて気がつくことがある。1年生の設定だけど2年生の気持ちで読んでみようなどと細かいことを思う。絵本は、自分で書いていてもこんな風に読み方まで変わっていくものなのですね。