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クイズバラエティ番組と化した日テレ・巨人戦中継への評価は

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NEWS ポストセブン

 波紋を呼ぶほど話題の企画となった――。8月20日、日本テレビ系で巨人対阪神(東京ドーム)戦が放送された。この日は解説者と実況アナウンサーが試合を伝える今までのスタイルをガラリと変え、山本浩二、中畑清、江川卓、高橋由伸、赤星憲広というプロ野球OB、羽鳥慎一(フリーアナウンサー)、伊沢拓司(東大出身のクイズプレイヤー)を迎え、『野球脳サバイバルナイター』を敢行した。

 この企画では、7人が次の打者の結果を5択で予想。正解すれば、アウト1ポイント、フォアボール2ポイント、犠打・犠飛3ポイント、ヒット4ポイント、ホームラン10ポイントをもらえる仕組みで、各イニングの最下位が1人ずつ脱落していくシステムが取られた。  19時に中継が始まると、5回に江川卓、6回に山本浩二と野球解説者が早々と去り、7回に羽鳥慎一、8回に赤星憲広が姿を消した。中畑清、高橋由伸、伊沢拓司の3人が9回まで残り、高橋由伸が累計ポイント数でトップになり、優勝を果たした。  この日、地上波の巨人対阪神戦はスポーツ中継というより、あくまでクイズの題材になっていた。いわば、新感覚の“クイズバラエティ”のような番組だった。斬新な企画に、ネット上では「意外と楽しめた」という肯定的な声もあれば、「画面がゴチャゴチャして野球が見づらい」という否定的な意見もあった。  今回の企画について、野球ファンからは不満が出て当然だろう。テレビ上の主役は選手ではなく、予想するパネラーたちに見えたからだ。実際、CMに入る前には〈中畑、高橋、赤星、羽鳥、伊沢 最後に残るのは?〉などと大きなテロップで煽っていた。  私も、最初は純粋に野球を楽しみたいと感じた。しかし、日本テレビの立場を考えれば、大胆な企画の敢行はむしろ遅いくらいだったかもしれない。事実として、もう15年以上も地上波のプロ野球中継は視聴率が取れていない。

 ここ数年、巨人の開幕戦でなんとか10%に乗る程度で、あとは1ケタが続き、放送自体も年に数試合しかない。昨年は日本シリーズの巨人対ソフトバンクでさえ3戦目まで2ケタに届かず、最終戦となった4戦目でようやく11.8%(ビデオリサーチ調べ/関東地区。世帯視聴率。以下同)になったほどである。日本テレビは視聴率争いでテレビ朝日と首位を競っているが、巨人戦をナイター中継すると、ゴールデン帯やプライム帯で1位になれない日も目立つ。  通常、テレビ局は数字が低ければ、番組にテコ入れをする。それなのに、野球中継はアナウンサーが実況をして、元選手が解説をするというスタイルを変えていなかった。しかも、地上波とBS、CSが同じ実況、解説の試合も当たり前だった。テレビ界では考えられない“番組”だったのだ。  この日の巨人対阪神戦は副音声では通常のスタイルで中継していたし、CSや動画サイトでも放送されていた。逆に言えば、野球ファンに他の選択肢があるからこそ、大胆な試みを敢行できた。そもそも、たまに地上波で中継をしても、毎試合巨人戦を見ている人はいつも通り、CSなどで視聴するはずだからだ。  地上波のコンテンツとして通用しなくなってきている巨人戦中継を、今までと同じ形で続けても、視聴率アップは見込めない。地上波がCSと差別化するなら、このくらいドラスティックに変えないと意味はないと考えたのだろう。この企画を機に野球中継を見てくれる新規ファンが少しでも増えれば、既存のファンにとっても喜ばしいことではないだろうか。  新しいことをすれば、賛否両論は巻き起こる。少なくとも、日テレは今までにない野球中継に挑戦した。果たして、第2弾はあるだろうか。(文中敬称略) ■文/岡野誠:ライター、笑点研究家、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。本人や関係者への取材、膨大な一次資料、視聴率などを用い、丹念な考察をした著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記』(青弓社)が話題に。

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